夏の日 仙台平野の稜線が白くかすむ夏の日である。
影山家の菩提寺は、なだらかな丘陵のひとつに建っていた。盆の入りで、空気は線香の香りを含んでいる。
「美羽と飛雄が楽しくバレーボールを続けられますように。二人が思うまま人生を歩めますように」
幼い影山は、祖父の声を聞き漏らすまいと爪先立ちになって祖父の手に掴まっていた。繋いだ手をゆらゆらと揺らされて影山は祖父の顔をまぶしそうに見た。
「さぁ、次は飛雄の番だ。ご先祖様にお願いをするんだよ、できる?」
「うん! できる!」
影山は祖父がしていたように目を閉じると、両手を勢いよくぱんとあわせた。絶対に願いを叶えて欲しくて「ごせんぞさま」によく聞こえるようにと、体をくの字にして腹の底から大声を出した。
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