惚れ直す 怖い物見たさの一見さんか、常連客か。通路から嵩上げされた畳敷の席は、ほとんど埋まっている。前方に設置されているステージでは、天井にぶら下がるミラーボールに煌めく怪しい光の下、三味線の音に合わせてショーが繰り広げられていた。
ちなみに、店内にいるすべてのスタッフは女装姿の野郎どもだ。
奥まった席で一人グラスを傾けながら、土方はその様子を半ば呆れ気味に眺めていた。
――地獄絵図だな……。
眉間に皺を寄せながら、心の中で独りごちる。
この店で迂闊にそんな事を言おうものなら、店の用心棒兼ママ、マドマーゼル西郷により即強制退去。そんな既知の事実は土方も耳にしているし、実際現場も目撃している。放り出されては元も子もない。口に出さない方が賢明だ。
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