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    ほなや

    腐ってる成人。何とか生きてる。気ままにダラダラしたりゲームしたり。
    気の向くままにはまったものを投稿してく。

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    ほなや

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    某支部に投稿したスiトiレiンiジiジiャiーiニiーのアーヴィン×主人公の小説。
    ※主人公の名前は「ヒトナリ」です。

    #ストレンジジャーニー
    strangeJourney
    #腐向け
    Rot
    #BL小説
    blNovel

    コーヒーブレイク(Side H)

    次のミッション遂行までの束の間の休息。
    常日頃フォルマの解析に明け暮れ休むこと無く稼働し続けているラボは、今は静寂に満ちている。
    その静寂な空間の中に、1人のクルーがコーヒーの入ったカップを両手に持ち、テーブルに着いている2人に差し出す。

    「アーヴィン、チェン。淹れてきたぞ」
    「おぉ、すまんのぉ」
    「ありがとうございます」

    ヒトナリに差し出されたカップを受け取り、ヒトナリが椅子に座ったのを見計らってどちらからともなくカップに口を付けた。
    こくりと1口飲み、ふぅ、と一息付く。
    コーヒーの香りが穏やかにラボを満たしていく。

    「ヒトナリさんの淹れたコーヒーは本当に美味しいですねぇ」
    「そうじゃのぉ。それにワシらが淹れるものよりもリラックス効果が高いときたもんぜよ」

    カップを見つめながら微笑みを浮かべるチェンとヒトナリの方に顔を向けてウィンクをするアーヴィンに、ヒトナリは苦笑した。

    「2人共大袈裟だな。いつものインスタントなのに」
    「いえいえ、これが違うんですよー。ヒトナリさんのは何ていうかこう…労いというか…心が籠ってる感じがするんですよねぇ」
    「そうそう!流石機動班エースの為せるテクニックというやつじゃの」
    「まったく、のせるのが上手いな」

    とりとめの無い談話に花を咲かせるクルー3人。
    ふと何かを思ったのか、ふぅ、と半分残っているコーヒーを見つめながらアーヴィンが溜め息を付いた。
    その仕草に首を傾げる。

    「どうしたんですかアーヴィンさん?溜め息なんか付いて」
    「ん?あぁ…こうしてコーヒーを飲んで過ごすのは悪くない…が、何か物足りないんじゃ」
    「物足りない?」

    そう呟くアーヴィンに、ヒトナリとチェンは顔を見合せる。

    「そう…メインディッシュが無いんじゃっ」
    「メインディッシュ?」

    眉を顰めて言うヒトナリに、アーヴィンは力強く頷く。

    「そうぜよ。このテーブル、いやラボに見合うメインディッシュ…それはっ」
    「それは?」
    「ミートパイ、ぜよ!」

    右人差し指を立て、力強く発言するラボの資材班チーフ。
    その姿に2人はぽかんと呆けていたが、しばらくしてチェンが口を開いた。

    「それって、アーヴィンさんが食べたいだけですよね?」
    「…ばれたか」
    「シリアスな顔して何を言うのかと思ったら…」

    呆れるヒトナリとチェンに、アーヴィンは罰が悪そうに悪戯に笑った。

    「でも、アーヴィンらしいな」
    「確かに」
    「お?ははっ、そうじゃろそうじゃろ?」

    アーヴィンは苦笑を浮かべる2人を見やり、カップに残っているコーヒーを飲み干しふぅ、と一息付いた。

    「じゃが、本当に食べたいとは思っちょるぞ?マミーのミートパイは世界一じゃきに」
    「そういえば前にも言ってたな、それ」
    「そんなに美味しいんですか?」
    「おぉ。どんな高級料理も足元にも及ばんくらいにはな」

    嬉々として話すアーヴィンに、ヒトナリは目尻を下げ口端を上げた。
    一瞬、アーヴィンの眉がぴくりと動きちらりと此方に視線を向けたたのが見えたが、すぐ口を開いて話そうとしている仕草になり何だったのだろうと思いつつヒトナリは再びカップに口を付けた。

    「こんな状況じゃなけりゃ今すぐにでも2人に食べさせたいところぜよ」
    「そんなに豪語されると、ますます食べたくなってきちゃいますよぉ」

    肘を付いて両手で頬を支えながらチェンが言った。

    「ここにシステムキッチンが設置されてたら作ることも出来るのにのぅ」
    「え、アーヴィンさん料理出来るんですか?」
    「いや、出来ん」

    きっぱりと言うアーヴィンに、ずるっと身体がずれた。

    「じゃあ意味ないじゃないですか…」
    「物の例えぜよ…ま、そうじゃなぁ」

    すっかり空になったカップを見つめながらアーヴィンが言葉を続けるように呟く。

    「もしここから脱出したら、ミートパイを作ってくれる嫁さんでも探すかの」

    途端、ヒトナリの身体が揺れた。僅かかつ一瞬だったため誰にも気付かれることはなかったが-
    カップを握り直し、再び2人の会話に耳を傾ける。

    「えー?お嫁さん探しですか?」
    「何じゃ、変か?」
    「別に変じゃないですけど、ミートパイ絡みとなると事ある毎にお母様のものと比べそうで…お嫁さんになる人は苦労しそうだなーって」
    「失礼な奴じゃのぉ…ワシがそんなことをする人間に見えるか?なぁヒトナリ」

    不意に話を振られ、びくりと身体が震えるのを何とか堪えながらヒトナリは言った。

    「あぁ。アーヴィンはそんなことをする奴じゃない。こうして知り合ってからまだ長くはないが、それは俺や皆がよく知っている」

    真っ直ぐアーヴィンを見て言ったヒトナリの言葉に、アーヴィンは目線を泳がせ、居た堪れないといわんばかりに頭を掻き始めた。

    「お、おぅっ。そうじゃろそうじゃろ。こんないい男そうそうおらんじゃきに」
    「も〜、評価が甘いですよヒトナリさん。ただでさえ1に開発2に開発な仕事人間なんですからこの人」

    溜め息を付き呆れながら言うチェンに、口を尖らせ反論するアーヴィン。
    そんな2人のやり取りを眺めながら、ヒトナリは残り少なくなったコーヒーを飲み干すためにカップに口を付けた。







    (Side A)

    次のミッション遂行までの束の間の休息。
    常日頃フォルマの解析に明け暮れ休むこと無く稼働し続けている自分の根城でもあるラボは、今は静寂に満ちている。
    その静寂な空間の中に、1人のクルーがコーヒーの入ったカップを両手に持ち、自分と助手に差し出した。

    「アーヴィン、チェン。淹れてきたぞ」
    「おぉ、すまんのぉ」
    「ありがとうございます」

    ヒトナリに差し出されたカップを受け取り、ヒトナリが椅子に座ったのを見計らってどちらからともなくカップに口を付けた。
    こくりと1口飲み、ふぅ、と一息付く。
    ヒトナリの淹れるコーヒーは自分達のものよりもとても美味しく感じる。同じインスタントの筈なのに、体温調節が可能な、しかし無機質なデモニカスーツに包まれた身体の内側を満たしてくれる。
    チェンも一緒になって褒めると、何ともヒトナリらしい、控えめな笑みを浮かべていた。
    その笑みに心が温かく感じられるようになったのはいつ頃からだろうか-
    こうして談話する内に徐々に見せてくれるようになった表情。今や見ない時があると落ち着かなくなっている程だ。

    そう考える内に、はっとする。
    何故1人のクルーに対してこんなことを思っているのか。
    そんな邪に似た思いを打ち消すかのように、残り半分になったコーヒーを見つめながら息を吐いた。

    「どうしたんですかアーヴィンさん?溜め息なんか付いて」
    「ん?あぁ…こうしてコーヒーを飲んで過ごすのは悪くない…が、何か物足りないんじゃ」
    「物足りない?」

    これ幸いと、心無しか空腹を感じ始めてきてそう切り出した。

    「そう…メインディッシュが無いんじゃっ」
    「メインディッシュ?」

    眉を顰めて言うヒトナリに、力強く頷いた。

    「そうぜよ。このテーブル、いやラボに見合うメインディッシュ…それはっ」
    「それは?」
    「ミートパイ、ぜよ!」

    右人差し指を立て、力強く発言する。
    しーん、と何故か沈黙が広がったが、しばらくしてチェンが口を開いた。

    「それって、アーヴィンさんが食べたいだけですよね?」
    「…ばれたか」
    「シリアスな顔して何を言うのかと思ったら…」

    呆れるヒトナリとチェンに向かって悪戯に笑ってみせた。

    「でも、アーヴィンらしいな」
    「確かに」
    「お?ははっ、そうじゃろそうじゃろ?」

    苦笑を浮かべる2人を見て、いつの間にかもうあと僅かしか残っていないコーヒーを飲み干しふぅ、と一息付いた。

    「じゃが、本当に食べたいとは思っちょるぞ?マミーのミートパイは世界一じゃきに」
    「そういえば前にも言ってたな、それ」
    「そんなに美味しいんですか?」
    「おぉ。どんな高級料理も足元にも及ばんくらいにはな」

    母が振舞うミートパイに思いを馳せ如何にそれが素晴らしいかを語り、ちらりと聞き手を見やるとヒトナリが眉と目尻を下げ微笑んでいた。
    その表情を見た瞬間、目を見張った。
    控えめなのは相変わらずだが、より穏やかな笑み。談話の時とは違う、自分だけに向けられたもの-
    その表情をもっと見てみたいという思いを何とか堪え、話を続けた。

    「こんな状況じゃなけりゃ今すぐにでも2人に食べさせたいところぜよ」
    「そんなに豪語されると、ますます食べたくなってきちゃいますよぉ」

    肘を付いて両手で頬を支えながらチェンが言った。
    そうだろうそうだろうと、心の中でしきりに頷いた。

    「ここにシステムキッチンが設置されてたら作ることも出来るのにのぅ」
    「え、アーヴィンさん料理出来るんですか?」
    「いや、出来ん」

    きっぱりとそう言うと、2人はずるっと身体をずらした。

    「じゃあ意味ないじゃないですか…」
    「物の例えぜよ…ま、そうじゃなぁ」

    すっかり空になったカップを名残惜しく見つめながら、こう呟いた。

    「もしここから脱出したら、ミートパイを作ってくれる嫁さんでも探すかの」

    そう言った瞬間、しばらく聞き手に徹していたヒトナリの身体が揺れた-ように見えた。
    心無しか表情も固くなっているような気もする。どうしたのかと問いかけようとすると、チェンが話しかけてきた。

    「えー?お嫁さん探しですか?」
    「何じゃ、変か?」
    「別に変じゃないですけど、ミートパイ絡みとなると事ある毎にお母様のものと比べそうで…お嫁さんになる人は苦労しそうだなーって」
    「失礼な奴じゃのぉ…ワシがそんなことをする人間に見えるか?なぁヒトナリ」

    先程のあれは何だったのかを確かめるのも兼ねて、ヒトナリに声を掛けた。
    すると-

    「あぁ。アーヴィンはそんなことをする奴じゃない。こうして知り合ってからまだ長くはないが、それは俺や皆がよく知っている」

    嘘偽りの無い真っ直ぐな眼差し、戸惑いを一切感じさせない言葉。
    その純粋とも言える姿を直視出来ず、居た堪れないといわんばかりに頭を掻き始めた。

    「お、おぅっ。そうじゃろそうじゃろ。こんないい男そうそうおらんじゃきに」
    「も〜、評価が甘いですよヒトナリさん。ただでさえ1に開発2に開発な仕事人間なんですからこの人」

    溜め息を付き呆れながら言うチェンに、失礼なと口を尖らせ反論する。

    (もしここから脱出出来たら、本格的に嫁さん探しでもするか)

    この休息の間に見せたヒトナリの数々の表情を何とか必死に頭の隅に置いやりながら、ミッション発動までの残り少ない時間を談話に費やした。
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