忘羨とある法具※おそらく口調はラジドラ
※2021年5月記載
「……忘機」
優しい声がして顔をあげる。膝を突き合わせて静かに茶に口をつける藍忘機の茶器の中身が幾ほども減っていないのを見て、藍曦臣は苦笑した。
「……」
「口に合わなかったかな」
「いいえ。」
とうにぬるくなった茶器に忘機が口をつけて、ようやく茶を飲み込んだ。
「……本当に飲んでいるのは、酢かな」
口元を袖で覆ってぼそりとつぶやいた言葉に、忘機はちらりと視線をあげて兄をみたあと気まずそうに逸らした。
「ん?」
魏嬰、と呼ばれた気がして魏無羨は振り返る。にぎやかな街並みを歩きながら、片手に天子笑をもって振り返れば、後ろにいた藍景儀が危ないな!と叫んだ。
「なんだよ、今呼んだだろ」
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