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    月科灰果

    ツキシナ・ハイカ。
    主に創作キャラと自探索者を描いています。
    キャプションはキャラ名と※コメントです。

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    月科灰果

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    #創作
    creation
    ##創作2番

    無声「紅い」
     仰向けで天井を眺めるだけの彼が、唐突に言葉を放った。
     何が紅いのか僕が訊くより先に、彼は言葉を続けた。
    「黒い夜も、白い星も、紅い血に塗れて行く」
     嗚呼、と零す彼。天井を眺めるその眼は虚ろで、何か幻影を見ているようだった。
    「僕が世界を殺して終った」
     酷く冷たい声で、彼は自責する。彼の眼に下に出来た隈が、痛々しい傷に見えた。
     僕はそんな彼に掛ける言葉を、いつも思い付けないでいた。もっとも、彼の事情を何も知らない僕に、良い言葉が思い付けるはずもなかった。
     彼の妹なら彼を助けることが出来るのだろうけど、彼は決して妹に縋ろうとはしなかった。唯、彼は時々こうして“他人”の僕の傍で、言葉を放つだけだった。
    「如何して、僕は生きてるんだろうね」
     きっと答えを望まない、問い掛けという名の自嘲。あえて、僕はそれに答える。
    「生きなくてはいけないからですよ」
     彼は上半身を起こして僕を見た。久し振りに目が合う。虚ろさの消えた彼の眼は、冷めていた。
    「然(そ)うかも知れ無い」
     はは、と小さく笑うと、彼は部屋を出て行った。

     閉まった扉の向こうで、彼はいつもの彼に戻っただろう。
     遠回しにすら、助けてと声に出さない、いつもの彼に。

     また僕は彼の声無きその言葉に応えることが出来なかった。
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