「ウェド、俺ね」
そう口に出しながら急に立ち止まった俺に、ウェドが優しい笑みを返す。
早朝の柔らかな朝日が、ウェドの瞳の中の青い海をきらめかせる。眩しくて、穏やかで、俺の心を掴んで離さない、ここにしかない海。
「俺、ウェドのことが好き。仲間としてとか、同業者として、とかじゃなくて…。あんたの一番になりたいんだ」
一音一音が俺には重くて、言葉が震える。でも、そんな俺の顔を見てウェドは微笑み、手を差し出した。
「俺も、テッドのことが好きだ。君を誰よりも一番、愛してるよ」
涙が一筋、頬を流れ落ちる。それは俺がもうずっと…きっと出会ってからずっと、一番欲しかった言葉だったから。
本当に?と投げかけると同時に、視界が眩しい光に包まれる。
──早朝の柔らかな朝日が、薄く開いた俺の眼を射す。のそりと身体を起こし周りを見渡すと、いつも通りウェドの姿は既に無く、テーブルの上に小さなギル袋が置いてあった。
「夢、か……、はは」
都合の良い夢だ。もう何度、こんな夢を見ては胸を締め付けられる想いをしただろう。諦めてしまえば、離れてしまえば、こんな気持ちには……
でも、できない。
胸が痛い。手のひらでぎゅっと抑えても、こういう時の痛みはどんな怪我よりずっと痛む。
さぁ、仕度をしないと。今日もしっかり仕事をして、生きるための日銭を稼がなければ、またウェドに迷惑をかけてしまう。
気怠い身体を起こし、テーブルへ向かう。いつも通り、金貨袋の中身は少し多くて、ほんのりとタバコの香りがして。
冷たい水で顔を洗って、乾いた涙のあとと一緒に虚しい気持ちを拭った。