やくそく◈◈◈
「おい、お前さん、あんたここらでは見かけない顔だけど、この街に新しく引っ越しでも?」
とある片田舎の小さな商店街にて。
蝉時雨の降り注ぐ中、八百屋の店番をしていた初老の男は目の前に横された買い物籠の中一杯に詰められた野菜やその他の食材と日用雑貨などの値段を計算しながら、その籠を持ってきた青年に尋ねた。
月白色の銀の髪に翡翠と琥珀の不思議な色をした瞳を持つ青年は明らかにこの周辺に住む人では無い。
この地域は観光地があるような街でも無いから、こんな所に外からわざわざ人が来る事は殆ど無く、だから不思議に思ったのだ。
「うん、ここの裏山に療養所があっただろう。そこがもう無くなったので、土地を買って屋敷を立てたんだ。昔あの療養所には世話になったことがあって、終の住処を作るならそこにしようと思ってね」
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