PSYCHO-PASSパロ「君なにやったの?」
突然聞かれて虎杖悠仁は面食らう。
柵越しの男は、興味深げにしげしげと虎杖を眺めていた。
決して自分の体格が貧相とは思っていない虎杖だが、それ以前の問題として目の前の男は背が高すぎた。虎杖でも首に角度がつくような長身、そして黒ずくめの全身に負けていないインパクトたっぷりの白髪。
極めつけがその両目を隠すアイマスクである。否、アイマスクというよりは形状としてはヘアバンドに近いのだろうか。とにかく幅の広い布で目を隠している男は、見た目も雰囲気もすべての要素を加味した結果、めちゃくちゃに悪目立ちするタイプだった。この場にほぼ人間がいないのは幸運ではないだろうか。
男はかたわらの女性を見る。
「硝子、この子マジで何したの」
「過去にコンビニ強盗を二人捕縛してるね。確保した通り魔の人数は四人、ひったくりは七……いや、八人警察に引き渡してる。また増えてるな……君警察に協力しすぎ」
「はあ?」
白衣の女性は最後には虎杖を見ながら言った。虎杖が何か言う前に、男が剣呑な声を上げる。ビビる習慣のない虎杖でもさすがにキョドって過剰反応してしまう。
男は虎杖を完全に無視しながら虎杖を指差す。
「いやいやいや、意味分かんないでしょ。じゃあなんでこっちにいんのよ。てか治安悪すぎでしょ、どんなド田舎出身?」
「ああ、あとそれから」
女性がタブレットをスクロールし、男を見た。
「六百二十一人殺してる」
その発言に息を呑んだのは虎杖だ。
男はというとしばらく黙り、口の端を吊り上げた。
「そういうのそういうの」
都民は日常を守るその仕組みをシビュラシステムと呼んでいる。
三十年前に導入された包括的障害福祉支援システム。街を歩く人々の精神状態をスキャンして数値化し、犯罪可能性まで可視化するスーパーコンピュータ。
主に東京都などの大都市を中心に運用され始めたその機械は、都会に住む人々に安定的な平和を与えた。
それと引き換えに、地方の治安は犠牲となった。生来犯罪を職業として営んできた者たちが、シビュラを避ける形で地方に散開したのだ。
近年、この都会と地方の治安差を問題提起する団体は過激さを増している。しかし最も矮小な、そして現実的な地方民は、ある程度の富を持っていれば――もしくは後腐れしないほどの身軽さであれば――さっさと都会に移住するという者が多かった。
虎杖悠仁もその一人だったらしい。以上、身辺調査報告より。
「いや~、僕が呼び出されるなんて久々だったから、どんなヤバイやつかと思ったら。これは想像を超えてたね」
男は柵に歩み寄る。男と虎杖の間には、最新型の電子鉄柵が立っていた。
身長に見合った長い手を持ち上げると、男は自分の目隠しを引きずり下ろす。
(あ)
虎杖は柵越しにその人を見る。深く蒼い目に引き込まれた。まるで作り物のように美しい瞳――。
(……いや、あれ義眼じゃないか?)
その両目がまさに作り物であることに気づき、虎杖はさらにまじまじと見つめてしまう。その様子に男のほうが声を上げて笑った。
「いいね。僕に睨まれて全然臆さないその感じ」
「……え、俺睨まれてたの?」
「しかもこいつは、うーん。本物だなぁ」
相手は目隠しを首に引っ掛けたまま小首を傾げる。
流れるように身体の横に手を下ろし、何かを掴んで、掴んだものを虎杖に向けた。
「……いっ!?」
大判な拳銃にも見えるその装置。
その装置と、それを向けられる意味を、虎杖は知っていたらしい。明らかに動転するが、彼は檻の中だ。その上両手にはこれまた最新型の手錠が掛かっている。
窮鼠のような状態の虎杖を気にせず、女性は深々と溜め息をつく。男の方は鼻歌を歌いそうに笑みを浮かべtた。
「五条、始末書を書く羽目になっても私は助けないからな」
「ダーイジョーブ。撃たなきゃいーんでしょ?」
「記録は残るぞ」
女性の忠告などどこ吹く風。
男は拳銃型装置を向けたまま虎杖を観察すると、さらに機嫌をよくしたようだ。
「パウダーブルー、犯罪係数24。筋金入りだね。こういうことがあるからこの仕事は面白いんだよ」
男の発言に白衣の女が目を丸くする。いまいち意味の分かっていない虎杖悠仁だけが――史上最悪の犯罪係数を叩き出して即逮捕されたはずの彼だけが、ずっと疑問符を浮かべていた。
▼五条:監視官
過去にいろいろあって両目が義眼。目がスキャナーになっていて見ただけで色相が分かる(最後にドミネーターを向けたのは本当におまけ)。
時々犯罪係数がマイナスに行ってしまうので、監視の名目としても公安預かりになっている(無下限をどうしようと悩んだ結果)。
主に虎杖担当。シェパード1。
▼虎杖:執行官
このあと執行官になる。普段は免罪体質スレスレのクリアな色相。
実は人造人間で、後述の違法AIが身体に宿る余地がある。違法AIの両面宿儺を自分に宿らせることでむりやり行動を制限しているが、そのせいで潜在犯になった。
ハウンド3。
▼伏黒:監視官
過去にいろいろあって五条にそそのかされる形で監視官になった。改造ホロを複数所持して使役している。可愛がってる。時々めちゃくちゃ濁るのでよく心配されるが、翌日にはしれっともとに戻る。
シェパード2。
▼釘崎:監視官
バリバリの叩き上げ。立ち位置としては本家の主人公にたぶん一番近い。問題はこの流れだとダチがどちらか死ぬこと。
シェパード3。
▼真希:執行官
いろいろあった。双子が監視官やってる。ドミネーターを鈍器扱いするのでよく怒られてる。
ハウンド1。
▼狗巻:執行官
生まれつき潜在犯。AIまで干渉できる声を持つ。
ハウンド2。
▼パンダ:施設管理職員
可愛いね。
▼家入:分析官
潜在犯では一応ない。バイでもない。
▼夏油:???
マキシマムでもいいと思うんですけど個人的にはそのへんの事件が全部片付いた結果雑賀先生してくれてると嬉しいです。
▼甚爾:免罪体質
振る舞い考えたらそのまま鹿矛囲になるわよね
▼真依:管理官
いま関西にいる。双子が執行官なので立ち位置なにもかも危うくてクソが代
▼宿儺:高度仮想AI
いっぱい人を殺しているやべぇアンドロイドがAIだけ自律して逃げたさらにやべぇ奴。
仮想AIなので人間の神経回路に取り憑くことができるのだが、虎杖悠仁に取り付いたのが運の尽きでしたとさ