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    ninayama2780

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    ninayama2780

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    芸能界パロディ。虎ガチオタの五

    #五悠
    GoYuu

    推しに推された(五悠未満)「傑!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
    「うるっっっっっっっさ」
     楽屋の扉を破壊するんじゃないかという勢いで飛び込んできた相方を見、夏油は十六万の美顔器の電源を切ってそっと安全な場所に避難させた。もちろん夏油の私物ではなく楽屋に置いてあったものである。美顔になりたいとかどうとかいうわけじゃないけど、普通に気持ちいいんだよねあれ……。
     夏油がゆっっくりと安全を確保している間に、五条はスライディングしそうな勢いで詰め寄ってきた。普通に障害物とか多いので落ち着いてほしい。今もテーブルから普通にティッシュの箱が吹っ飛んでいったし。
    「ねぇ見てこれ!!!!! ねぇ!!!!!!」
    「先に十八分ほど遅刻した理由話してもいいけどどう?」
    「お前何でイヤホンしてんの? 悠仁の声聞こえないじゃん舐めてんのか」
    「悟はイヤホン使いなよ五条悟が歩きスマホしながら若手タレントのホラゲー実況爆音で流してるの普通に怖いからね」
    「見てこれ再生すっからほら」
     お互い外国語で会話しているのかというほど会話が噛み合っていないが、堆積していく情報は勝手に五条の時間を進めていく。はいもイエスも一言も言っていないのに五条は夏油のスマホをテーブルから叩き落とし(夏油はきちんと滑り落ちていくそれをキャッチした)、夏油の目の前に開かれていたスケジュール帳を下敷きにして、荒々しく彼の目の前にスマホを立てた。iPhone12が泣くぞ。
    『――じゃあ尊敬する芸能人は?』
    「あれ、伏黒くんじゃん」
    「傑うるさいちょっと黙って」
    「悟、あとで一発殴らせてね」
     スマホに表示されていたのは何らかの対談動画だった。背景はラフで、やりとりの間合いも微妙。テロップもどこか手作り感が溢れているということは、投稿者が自主的に配信したものらしい。
     画面内でカンペらしきものを手に、非常に拙い感じで進行しているのは伏黒恵だった。この子なんであんなに演技上手いのにナレがこんなに下手くそなんだろうなぁと夏油はしみじみ思う。
    『んーとね』
    「あ、そういうこと」
    「黙ってって悠仁の息が聞こえないから」
    「これ終わったらぶつからね悟」
     伏黒が会話している相手。並んで座り、彼からの質問に答えているのは、新進気鋭の若手タレント・虎杖悠仁だった。
     五条悟は虎杖悠仁のガチオタである。
     ガチ恋なの? と聞いたら「うっかり誰かが聞いたら炎上しそうなワード使うんじゃねぇよ」と殴られたので殴り返し、二十分ほどそのまま殴り合いの喧嘩をした。結論、五条悟は強火単推しガチオタ(崇拝系)という感じらしい。お前ら喧嘩しないと会話できないの? と家入に言われた。多分そう。
     散弾銃を突きつけ合うようなお笑いコンビの会話などいざ知らず(知られててたまるか体裁があるわ)、画面内で虎杖はにこやかに笑う。奥歯まで歯並びがいい。
    『五条悟さん! 祓ったれ本舗の!』
    『マジか』
    「マジか」
     画面内の伏黒と、画面を見ている夏油の声が重なった。夏油が五条を見れば、天を仰ぎながら目尻からスーと涙を零している。そのままお迎えが来そうな雰囲気である。大人しくなってくれるなら一旦持って帰ってもらってもいいなこれ。
    『マジで? なんで? 弱みとか握られてるなら聞くぞ』
    『どういう反応?』
     画面内で伏黒は真剣な顔をしているが、虎杖は全部冗談に聞こえているらしい。朗らかな笑い。ああまぁたしかにこれを見たら天気が良くなりそうな笑みだ。五条の言う雲が割れ光が差し花々は咲き誇り地球温暖化が解決するまでのインパクトは分からんが。
     どうやら五条が聞かせたかったメインはここらしい。それ死んだ人間の遺影かなんか? という勢いでうやうやしくiPhoneを抱きしめる五条をドン引きしながら夏油は見る。
    「それ何?」
    「昨日の恵の雑談生放送のアーカイブ」
    「ああ、なるほどね。だから残ってるんだ」
    「そう! 悠仁ももっとアーカイブ残してくれていいんだよ~日和るなよ~甘噛したのが恥ずかしいからって毎回アーカイブ残してくれないのなんで!? 好き! てかねぇ聞いた!? 尊敬する芸能人だよ!! 俺もうなんか知らない国に学校とか建てちゃおうかな!?」
    「うんうんそうだね。じゃあそろそろ一回表に出ようか悟殴らせろ」
     鈍器にちょうどよかったので十六万の美顔器を握りしめながら、夏油は笑顔のままゆっくり立ち上がった。

     その後、某テレビ局の楽屋廊下で丁々発止の殴り合いを繰り広げる祓ったれ本舗の二人が目撃された。
     通りがかった新人タレント三輪が狼狽えながら警備を呼ぼうとしたが、更に通りがかった七海建人(時代劇出演のため和装姿)が「いつものことなのでやめなさい」と引き止めた。そんな七海も通りがかった真人に髪の毛をぐしゃぐしゃに崩され、本気で走って追いかけていった。三輪が唖然としているうちに祓ったれ本舗の喧嘩も収まっていた。美顔器は五条が弁償した。
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