Dust To Dust -Ⅱ「診せろ」
村雨の言葉に獅子神は顔を強張らせ、再び俯いた。
毛布の下の身体に残された跡は、恋人に見せるには余りにもおぞましい痕跡だ。
勿論それを晒した事により村雨に何らかの心変わりが生じる事などありえないし、その事は獅子神も良く分かっている。
それでも心情としては見せたくない、が先に立つ。村雨は今、誰よりも見せたくない相手だった。
他の相手ならば容赦無く邪魔な布を剥ぎ取り診察するか、診せる気がないなら帰れと蹴り出す村雨も流石に今の獅子神相手には何方も出来ない。
無表情の下で途方に暮れれば、獅子神にぴったりと毛布越しに密着し獅子神の背を撫でていた真経津が察して柔らかく促す。
「獅子神さん、村雨さんに診てもらおう? ね?」
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