【hrak】茶+梅雨とダンス衣装 雄英高校一年A組の面々が暮らすハイツ・アライアンスの、女子寮四階の空き部屋。その部屋は今、台風が通過したかのような惨状だった。
理由は簡単だ。三週間後に迫った文化祭でダンス隊が着る衣装を作るための作業場に、この部屋が選ばれたからだ。他の部屋から運び込んだ机に家庭科室から借りてきたミシンが並び、開け放ったクローゼットには沢山の材料が詰め込まれている。掃除や片付けが追いついていないせいで床のあちこちに布の切れ端や糸くずが散らばっており、裁ち鋏やメジャーがしょっちゅう行方不明になる。その度に探したり互いに借りたり貸したりしているせいで、誰が誰の道具を使っているのか誰にもわからない。
既製のセットアップに手を加えるだけとは言え、衣服を加工するとなるとそれなりの裁縫の技術が必要とされる。そしてその技術は、高校生である彼ら彼女らの中で大きくばらつきがあった。
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