ドライ「おいおいクリプト、また頭濡れてんぞ。ほれ、ここに来い」
そう言ってミラージュがポンポンと叩いたのは髪を乾かす際に使う小さめの丸椅子。
クリプトは不満そうに口を尖らした後、渋々ちょこんとそこへ座った。
「よーし、いいこだ。大人しくしてろよ」
ご機嫌に笑うミラージュに、お前は母親かと言いたかったが、ご機嫌な恋人に水をさしたくなくてクリプトはされるがままだ。
最初に軽くタオルドライをした後、ミラージュはドライヤーを取り出しクリプトの髪を丁寧に乾かしていく。
その手つきは優しく手馴れていてクリプトの瞳は細まり、口角は自然と緩む。
その表情を見るのが好きなミラージュはしかし本人に伝えることはしない。
言うと照れて二度と乾かさせてくれなくなると分かっているからだ。
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