見上げるものたち 星が、綺麗だった。
ダンデに負けた回数が遂に片手の指の数を超え、オレは夜のワイルドエリアをひとり歩いていた。
お供のフライゴンはいる。けれど、今はボールの中でお休み中だ。
さく、さく、さく。
オレが踏む草の音と、遠くのポケモンたちの音が混ざる。
ここいらのポケモンは大人しく、夜行性のものも少ない。それの見越しての散策ではあったが、目的などない。
ただ、ただ、無作為に。
暗い世界を歩きたかった。
ああ、でも。
「……星は、いつでも光ってやがるなあ」
その光すら、疎ましい。
オレは視線を下へと向ける。そこにはオレの足だけ。
いつだって、オレの足だけ。
「…………」
ため息ひとつ吐いて、また歩く。
さく、さく、さく。
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