事後の甘いひととき。
愛しいバンに寄り添って、ウトウトするエレインの腹が鳴った。
《ごおお》
「きゃああいやあああああ」
「ブハッ♫ お、音が……激し……ぎゃははは!」
だが、爆笑するバンの腹の虫も……。
《もきゅー》
「ウウッ、なんでバンのお腹の虫のほうは可愛い感じなの……」
「カッカッ♪ まぁまぁ……しかし参ったな。食材空っぽだぜ……ん? そうだ、ちょっと待ってろよ」
そう言って恋人の額にキスし寝台から降りて部屋を出たバンは、十分もしないうちにトレイに何かを乗せて持って戻ってきた。
「じゃ~ん! カップ麺発掘した〜♫」
「わぁ! 実は私、カップ麺食べたことないの」
「マジか? ま、たまにはこういうジャンクなおやつもアリだろ。三分で出来っからな〜♫」
カップ麺ができるまでの三分間、エレインは三十秒ごとに「できた?」「三分経った?」と瞳をキラキラさせながら何度もバンに尋ねたものだから、おかげでバンにとってはとても楽しい三分間になったのだった。
……さて。
「さ、お待ちかねの時間だ♫ しょうゆとトマト、どっちがいい?」
「うーん、トマト」
「熱いから気をつけろよ」
「うん。ふふふ、いただきまぁす!」
ふぅふぅふぅ。
ずぞぞぞっ。
ふー、ふー、ふー、ちゅる「熱っ」もぐ、もぐ。
ぞぞぞぞっ。
エレインが一口食べる間にバンは半分近く平らげる。エレインは必死にふーふーしながら不器用に麺をすすった。
「おいしい!」
「うめぇか?」
「うん!バンにもトマト味、一口上げるね」
「いや俺は」
食べたことあるから、と断ろうとして思いとどまった。エレインはバンに食べさせようとまた必死に麺に息を吹きかけている。そんな必要、まったくないというのに。
「はい、もう大丈夫よバン。あーん」
「……ん」
エレインは麺を絡めたプラスチックのフォークをバンの口元に運んでくれる。バンは今だってお互いに裸でむきあっているというのに、なんだか無性に照れくさい気持ちになった。
「……しょうゆ味も食ってみっか?」
「うん!」
それからもうあまり残っていないしょうゆ味を、照れ隠しのようにエレインに食べさせてあげたのだった。