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    bell39399

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    bell39399

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    どえらい不調なのでかたならしに

     バンはクロスワードパズルと格闘していた。全く興味もやる気もなかったのだが、キングがヒィヒィ言いつつも解けないでいるのをからかったら「じゃあキミがやれば。できないだろうけど!」と言って置いていったからだ。
     こんなんに好き好んで時間割いているやつの気がしれねぇ!
     何度も本を破り捨てようとしたが、のちのちキングが「はーん。なんだ、やっぱりキミもできなかったんだね」と妙な上から目線の煽り顔でドヤってくるはさらに耐え難い。
    「ここは、こうだよ」
     そこに突然ゴウセルが、バンと本の間に首を突っ込んできて、言った。
    「こっちの答え、こう」
    「マジか、ほかも分かるか?」
    「すぐに全部分かるよ」
    「ありがてー! 全部教えろ!」
    「いいよ」
     ゴウセルは嬉しそうにニッコリ微笑み、快くすべての回答をバンに教え示した。

    「あー、助かったぜゴウセル♫ これでキングドヤ顔の刑から逃れられたわ♫ 今度奢るぜ!」
    「俺は飲食できないからいいよ。バンが喜んでくれて満足」
     ゴウセルは幸せそうに答えたが、ふと表情を曇らせて「でも……」と唸った。
    「なんだ、関節に油でも刺すか?」
    「俺はそういう動力じゃないから大丈夫。じゃなくて、バンは喜んでくれたけど、キングには叱られたんだ、教えるなって。悩んでいたから教えてあげたのに」
    「ああ……」
    「いったい何が、いけなかったんだろう」
     しょんぼりと丸い頭が垂れる。ゴウセルは真剣だ。バンも何時もなら知るかと突っぱねる所だが、いつものほほんとしている仲間があまりにもしょげ返っているのと、実質すべての問題を解かせた恩義もあるので、真面目に答えてやることにした。
    「奴がドMだからだ」
    「えっ?」
    「この世にはいるんだよ、好き好んで苦しみたい性癖の持ち主が」
    「それってバンみたいに?」
    「俺はべつにドMじゃねぇし、痛いの楽しいのは肉体的な方だ」
     それってドMって自白しているよね、とゴウセルは思ったが、話が続く気配に黙ったまま目線で先を促した。
    「そうじゃなく、精神的な苦痛が楽しい方だ。わざわざ解けない問題に悶々としているのが気持ちいい輩だ。キングはそれ♪」
    「そっか」
     ゴウセルは目の前が開けた心地がした。ならばあのキングの態度にも納得だ。悪いことしちゃったな、と。
    「しっかりメモリーした。人の心って複雑だけど面白いね。これからは気をつける。ありがと、バン!」
    「オウ♪」

     こうしてゴウセルはまた、一つ人の心を学んでより良く愛される人形に近づいたのだった。

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    bell39399

    MAIKINGバンエレ水浴び一人アンソロその1(2以降があるかは謎)

    途中まで書いたやつポイ。
    一人称に直すかも。なんとなく
    それを見た時、バンは幻を見たのかと思った。もしくはまだ寝ぼけているのか。
     

     夜中、水音を聞いた気がしてふと目が覚めた。もとより熟睡することのないたちだったが、この森に来てからは妙によく眠れる。にもかかわらず、だ。それに何故か少し冷える。
     その原因に気づき、思わず自嘲した。なんの事はない、隣で寝ていたこの森の聖女がいなかっただけの事だ。
     この森も、この森である秘宝を守っているという少女も奇妙な事だらけだった。安らぎやぬくもりとは無縁の生活を送ってきたバンだったが、ここに来てからは気持ちが凪いでいる。不思議なことだが本能で警戒する必要がないと感じていた。
     エレインと名乗る妖精少女(本人曰く千年は生きているらしいが)とのやり取りも実に愉快だった。彼女はバンの他愛のない話を夢中で聞いて、四季のようにくるくると表情を変えながらバンの言葉の一つ一つにいちいち反応する。時には金色の睫毛を伏せ、時には頬を膨らませ、そして何よりよく笑った。バンは彼女の笑顔で初めて「花が綻ぶような」という形容の意味を知った。
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