豚の帽子亭にて1。そのきゅー!「わぁっ、本当に豚の帽子亭がある!」
衛兵の先導で連れてこられた酒場を見上げてエレインは手を叩く。
「といっても、こっちの建物は初めてだけど……。フフッ、とっても楽しみ! ……こんばんわ!」
まだ起きないバンを浮かせて連れたまま店の扉を開けると、店内はそこそこに賑わっていた。
「いらっしゃ……おお、きたかー!」
店主、もとい国王のメリオダスが二人を認め、両手を上げて歓迎する。
「予定より少し遅かったな……っていうか何だ、その荷物は」
荷物、とはバンの事である。エレインは苦笑いを混ぜつつ、ここに来るまでの経緯を説明した。
「何だよバンさん、よその店で先にやっちまうとはつれないですなぁ」
あっ、とエレインが思う間もなく、メリオダスは空中で大いびきをかいているバンに一発入れる。が、ぐっすり寝ていた筈のバンは一瞬で跳ね起きて、すんでのところでそれをかわした。
「っぶねーな、なにしやがる♬」
「久々の再会なのに酔いつぶれてやって来るほうが悪いんだろ」
「おー、確かに久々だな♬ ヤるか〜?」
飛び退り一定距離をおいたバンはファイティングポーズ。やるか、なんて聞いてはいるが寧ろやる気まんまんだ。周りの酔客もすわ喧嘩か、いやよく見りゃバン王様だ、伝説同士の喧嘩だ、やっちまえ! と囃し立てる。……が。
「やるか、バカ。店が壊れちまうだろ」
と、メリオダスはお盆でバンの頭を叩いた。
「ちっ、丸くなりやがって♪」
「バンさん、後ろ見てみ」
「バーカ、そんな手に乗る訳……ン?」
背後からつんつん、と突かれて後ろを見ると、目以外満面の笑みを浮かべたエレインが、無言の圧を送っていた。
つづくなり。