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    アイドルパロの悠順がプロポーズをする話

    #悠順
    yushun

    『みんなー!今日は本当にありがとーっ!』
    『配信の方も、次は絶対会場で会いましょうねー!』

    最後にアンコールを終えて挨拶をするとBGMが大きくなり、キャーッ!と客席から歓声が上がる。そして最高潮になったのに合わせて天井からパン!と3階席まである大きな会場へ金のリボンが光を受けながら降り注いだ。

    白いストロボが顔に当たってつ、と額から汗が伝っていく。ちらと横に目をやれば悠仁も僕を見ていて、2人だけで小さく笑った。

    1面のペンライトが夜空に浮かぶ星みたいに輝いている。悠仁の赤色と僕の青色がキラキラと舞うのを見送って、歓声を受けながらゆっくりとステージを後にした。

    「ははっ、すごかったね…!悠仁、かっこよかったなあ」
    「順平もすっげー良かった! 俺絶対この公演のBluRayもらおーっと!」
    「あはは、ありがと!後でたくさん反省会しないとね!」

    イベントグッズのタオルで汗を拭いながらスタッフさんへお疲れ様でした、と沢山挨拶して、ライブの余韻の残る足で2人でまるで踊るみたいにふざけ合いながら楽屋へと戻った。

    「ッあー! 超いー感じに疲れた!」
    「そうだね、気持ちよかったなあ」

    化粧台に並んだ椅子に腰掛けて、2人でやっと深く息を着く。興奮してまだ高鳴る心臓の音に耳を澄ますみたいに目を閉じれば、まだ瞼の裏でサイリウムが光っているみたいで。
    キラキラしたお客さんの笑顔を思い出しながらライブの余韻に浸っていると、心音が落ち着くにつれてへにゃ、と口元が緩んでいく。

    「じゅーんぺ」
    「ん、なあに?」

    ほ、と息をついて目を開けると目の前に悠仁の顔があった。余韻の残る少し火照った顔。頬にもいつもより赤みが差している。
    背中側の壁に手をつかれているせいでまるで壁ドンされてるみたいだ。

    「なに? ファンサの練習してんの?」
    「ねえ、チューしていい? ね、1回だけさ」
    「ダメだよ、マネージャーさん来ちゃうだろ」

    興奮してんの? と低く笑うと悠仁は悪いかよ、と不貞腐れたみたいな顔をする。人に見られるかもしれないと伝えても、それでも全く引く気は無いみたいで、返事の代わりに熱い吐息が首筋へ当たった。

    「じゃあ舐めるだけ、ね?」
    「それ、何が違…っン…あ」

    ぐっと寄せられた体へと抱き寄せられたと思った瞬間には唇が舐られていた。
    ぬる、ぬると形をなぞり、弾力を楽しむみたいに舌が這っていく。

    アンコールにかけて衣装から着替えたライブTシャツの下は互いに何も着て無かったから、抱き寄せられたせいで密着した身体から相手の興奮がリアルに伝わってくる。

    どく、どくと皮膚を通して鼓動が響いてくる。高めの体温も、熱い吐息も、少し張り詰めたような筋肉の動きだって、全部悠仁が高ぶってるんだって伝えてくる。
    その一つ一つが自分の中で燻っていた感覚を煽るから、たまらず内ももを擦り寄せた。

    「ン、ふ……うッ、ねえ、人来ちゃう…からっ」
    「ベロ、出せよ」
    「ゆ、じ……ン…れる、っン……ん……ふう」

    言われるがままに、恐る恐ると舌を出すと厚めの唇にぢゅ、と唾液ごと先端を吸われた。ちゅ、ちゅとしゃぶられて、そして拍子に薄く開いた口へ舌が入り込んでくる。翻弄されているままだったそれに乗せられるように、だんだんと互いの唾液を交換するように舌を絡めて、吸って、飲み込めば、その度にぢゅく、ぢゅくと音が鳴った。

    どんどん身体に力が入らなくなって、もう完全に抱き抱えられるみたいになってしまう。椅子に座ってさえいなければとっくに床へと崩れ落ちてしまっていただろう。

    そして少し汗ばんだ悠仁の首筋から、微かにマリン系の香水が香ってくるのに気がついた。
    自分が愛用している物と同じく香るそれに、思わず動きが止まる。

    (悠仁は、香水使わないはずなのに……)

    悠仁は香水をつけない。何つけたらいいのか分からないし、香りで集中できないから、といつも大容量で無香料の制汗剤だけ使っているような男なのだ。

    確かに小分けにしたスプレーは今日もバッグへ入れてきたけれど。

    「……君、僕の香水つけてライブ出てたの……?」

    ようやく口を離し、肩で息をしながら問いかけると、悠仁は気づいた? とイタズラがバレてしまった時の子供のように笑った。

    「……だって、俺は順平のでしょ?」

    にい、と幸せそうに笑う悠仁の笑顔から目が離せない。

    (ああ、君はどうして)

    「……ズルいよ、そんなこと言っちゃってさ」

    僕らは男同士なのに、君との関係だっていつか終わっちゃうかもしれないのに。

    君の彼女になりたい女の子なんてたくさん居るだろうに。きっとその中には僕より綺麗な子だって、可愛い子だって居るだろう。それなのに。

    「……僕、君のこと、手放せなくなっちゃうじゃん」

    ぎゅう、と広い背中へ腕を回す。
    切なくて、幸せでおかしくなりそうだ。

    「またそーいうこと言う。安心させたくてやったのに、俺」

    こんなに好きなのにわかんねえ? と泣きそうな目元へ啄むような軽いキスが落とされて、くしゃくしゃとまるで犬を構うみたいに頭が撫でられる。

    「あはは、もう、せっかくのヘアセットがぐちゃぐちゃだ」

    もう泣き笑いみたいになって腕の中でけらけらと笑う僕に悠仁が真剣に向き直る。さら、と前髪が避けられて、両目に互いの姿が映った。

    「……ねえ、ずっと俺だけ見ててよ。もっとキラキラした所たくさん行って、俺達の関係になんて誰からも文句言われねぇくらいデカくなってさ…!! そしたら、そしたらさ……」

    ぐ、と肩に置かれた両手へ力が篭もる。言葉を言い切ると、飴色の目は一瞬惑うように揺らぐ。そして覚悟を決めたように強い眼差しとなり再び僕を見つめ直す。

    「……俺と、結婚してくれる?」
    「え……」

    ……君、今なんて言ったの?
    結婚する? 僕と?

    「けっ、こん」

    向けられた言葉を、咀嚼するように口ずさむ。

    結婚。

    ……それが出来たら、どんなにいいだろう。

    誰にも隠れることなんてない。誰かに取られてしまうと心配をすることだってない。

    君を愛しているから僕は今隣にいるのだと。そう誰しもへ証明出来たのなら、それはどんなに幸せだろうか。

    「あ、れ」

    ぼろ、ぼろと涙が頬からこぼれていく。
    ぬぐっても、ぬぐっても、それはとめどなく溢れてくる。

    「っふふ、どうしよ、止まんないや」

    本当なら満面の笑顔を見せたいのに。それを止める術がわからなくて、仕方ないから泣きながら思いっきり笑ってみせた。

    「結婚してもいいよ。 君がずっと僕を愛してくれるなら」
    「……マジで……?」

    珍しいほど緊張した悠仁の全身から、力が抜けていく。そしてぺたりと床にへたりこんでしまった。

    「ゆっ、悠仁…?!」
    「ま、マジで結婚してくれんの……? ……俺と?」

    ぱちくりと大きな目を瞬かせて、プルプルと震えながら信じられないといった顔で僕を見上げてくる。
    さっきまであんなに真剣だったのに、今ではまるで子犬のようだ。

    「っふふ、そう言ったじゃん。 僕と結婚しよう、悠仁」
    「……じゅんぺ、俺、順平が好きだよお!」
    「わあっ!! な、泣かないでよ……!なんで!?」

    目線を合わせるようにしてしゃがみこむと僕を見つめる目からもボロボロと大粒の涙が零れてきた。感極まったのか、子供みたいにぐしぐしと目を擦る悠仁を抱きしめてやると胸の中でくぐもった声が『すき、すき、あいしてる』と何度も言うから、それを聞いてるうちにいつのまにか僕の涙は止まっていた。

    「ふふ、まずは新曲でビルボードのジャパンチャートでトップ取るところからかな」
    「びっびるぼぉど!?」
    「……いけるでしょ? 僕らならさ」

    不敵に笑うと、悠仁もぐす、と眉を下げたままへにゃりと笑う。

    「順平とならさ、きっとなんでもやれるよ俺」
    「うん……僕もだよ、悠仁」

    腕の中で幸せそうに笑う恋人へ、未来の婚約者へ。まだ見ぬ幸せを未来へ誓うように、優しくキスをした。

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