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    oiko04588759

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    oiko04588759

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    🦈が嫌い🦐によるひたすら🦈を精神的に追い詰めるだけのやつ
    多分どうにもならない

    「噛んで」

    す、と手を差し出され、困惑する。何の意図があるのかと、顔を見てもいつも通りの笑い顔。ぷらぷらと揺れる腕がぐぃっ、と口元に押し付けられる。ニコニコと笑っている。「いや、」と言って身を引きかけると途端真顔になり、がっと顔を掴まれ腕に押さえつけられ、ぐっと呻き声を上げる。

    「噛めって」

    ぐいぐいと押し付けられ、必死に退けぞろうとするが、力ではどうしても敵わない。その内本当に機嫌が悪くなってきたのか、一際低く、冷たい声で、「絞めるぞ」と言った。背筋がぞっと凍ったが、訳の分からない言い分で噛みたくなんてない。首を横にふる。舌打ちをしながら手が離れると頭を壁にぶつけられる。ゴンッと音がなるほど強く打たれ、一瞬視界が白に染まる。痛みより先に熱さがくる。痛みがやってくる前に立て続けにゴッ、ゴッと頭を打ち付けられる。回る視界が鈍く光る金の眼を映した。パッと手を離され、ずるずると床に崩れ落ちる。それを追うようにしゃがみこむフロイド先輩は、もう一度「噛んで」と言った。

    「それが人に物を頼む態度ですか」

    「何?まだそんなこと言ってんの?」

    「噛みませんよ。こんなことする人の肌に触れたくも無い」

    頭を打ち付けられてジクジクがんがん頭が痛む。ハレーションを起こす脳内で、それでもこんなことを許す訳にはいかない。自分は何も貴方にしてないはずだ。こんな仕打ちを受ける義務も義理もない。暴力に訴えることは何より嫌いだ。ひとつ加減を間違えれば平気で人が死ぬ行為を、笑いながらやってのけるこの人に胃が焼けるほどの嫌悪感を抱いた。

    「俺が貴方の為に、することなんて何一つ無い」

    「……」

    目も合わせたく無くて地面に視線を落としていると、ぽた、と雨が降ってきた。しかし空は晴れたまま、どこから降ってきたのかと視線を少し動かすと、フロイド先輩が静かに涙を流していた。

    「やだ…やだ…」

    俯いてぶつぶつ呟き続けるフロイド先輩。腕の囲いは解かれた。今なら容易く逃げられるだろう。そのまま立ち上がって無言で立ち去る。フロイド先輩が動く様子は、ついぞなかった。


    翌朝、痛む頭に手を当てながらオンボロ寮の玄関から外に出ようとすると、玄関の横にフロイド先輩が体育座りしていた。ぎょっとして、すぐ逃げる。
    追いかけてくる様子は無い。そのまま教室へ向かった。
    来る日も来る日も朝座っているフロイド先輩に、ついに観念し、「なんの用ですか」と聞いた。

    「嫌いにならないで…何でもするから、何だってしてあげるから、」

    「いやです」

    「なんで?どうしたらいいの?どうしたら許してくれるの」

    「なぜ?だって貴方のことで患いたくないんです。今だって顔も見たくないのに、朝ずっといるから仕方なく話してるんです。何でもするならもう顔も見せないでください」

    ボロボロ泣き出すフロイド先輩。泣いてたら可愛いのに。
    「や、やだ…やだ…」頬を伝う水の量があまりに多いので、制服の襟元はぐっしょり濡れている。「もういいですか」と玄関をくぐる。背に手を伸ばされたような気がしたが、結局手が触れることはなかった。

    朝にフロイド先輩が座っている事は無くなったが、代わりにマドルやら高そうな食べ物やらが玄関先に置かれていた。それに一切手を出さずにいると、その品が置かれることはなくなった。代わりにジェイド先輩がやって来て、お詫びの品です、と魔法薬を渡された。

    「何の薬ですか」

    「回復薬です。主に怪我の治療や、疲労回復などの効果があります。ご安心を、この品は正真正銘詫びの品です。対価などいただきませんよ」

    青く透ける瓶の中には、たっぷりと液体が揺れている。未だフロイド・リーチに打ち付けられた額はぱっくり裂けたままだ。医務室では応急処置しか施されなかったので正直ありがたいが、どうにも気が晴れない。慇懃な態度を完璧に保つジェイド先輩は、薬をこちらに渡す姿勢のまま動かない。ありがとうございます、といって薬を受け取る。いつまでも居座られては背筋が落ち着かない。

    「大変申し訳ございません、僕の兄弟が」

    「それを言うのは貴方ではないでしょう。薬は受け取りますが、彼には自分で謝って薬を持ってくるという誠意すらないみたいですね」

    彼の行動は自分が楽しいか、その一点に尽きる。だからお気に入りの玩具に反抗されたら平気で殴るし、自分に対して拒絶されたらこちらの気持ちも考えずに、許されたいだけの行動を繰り返す。だって、彼は一言も謝りもせず、こちらを気遣うこともしなかった。自分の中でフロイド・リーチへの嫌悪感が増していく。ジェイド先輩はその心の動きを興味深そうに見つめると、ニッコリ笑った。

    「確かに今回の件はフロイドに責がありますね。反省させます」

    「ぜひそうしてください」

    パタンと扉を閉めると、薬の瓶をゆっくりと光に当ててみる。──不純物。無し。青色で透明。密閉されている。類似する物に毒物。──無し。しかし断定は出来ない。明日クルーウェル先生に聞いてみよう。ことりと机に瓶を置いた。

    クルーウェル先生に調べてもらい、ただの回復薬であることを確かめるとありがたく飲ませてもらう。いい加減打ち付けた額が痛かった。しばらくして痛みが引いてくるのを感じ大きく息を吐く。この所頭痛が酷く、恐らく骨にヒビでもはいっていたのかもしれなかった。かといって保険も戸籍もない自分が病院にかかれるわけもなく、置かせてもらっている以上休む訳にも行かない為、この不安を解消出来たというのは精神に安定をもたらした。

    久しぶりに穏やかな気持ちで授業に挑む。
    こうして見ると怪我をしていた自分は平常では無かったと気付く。いつもどこかに焦燥を感じていて、普段なら笑って許せることも許せていなかった。フロイド先輩に会う機会があったなら、きちんと言って終わりにしよう。恐らく話は通じないだろうし、事の発端の「噛んで」の発言の意図も分からないままだ。それでも話すことに意味がある。理解しようとすることを放棄してはこの世界では生きていけない。ペンを走らせる。ひとまずはあちらの出方を伺おう。

    会う機会がぱったり無くなった。
    必ずといっていいほど遭遇していたフロイド先輩が、薬を受け取って以来全く出会さない。おかしいと思いエースに聞いてみたところ、バスケ部にも顔を出していないようだった。それどころかフロイド先輩は学校にすら来ていないかのようにその影を消していた。
    何かあったのかもしれない。そう思ったが、だからなんだと言うのだろう。別に親しいわけでもないのに。会わないなら会わないで越したことはない。そもそも自分はフロイド・リーチが嫌いだ。次会ったら話そうと機会を伺っていたが、相手がいないのなら別に構わない。すぐに思考は解けていった。

    しばらくしてアズール先輩がモストロラウンジへのアルバイトをしないかと誘いをかけてきた。丁重にお断りしたが、グリムがまたやらかしたようで否応なしにアルバイトへ入ることになった。
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