「今日の飯はオレが作る」
なんの前触れもなく突如そんなことを言った乾に、黒川は今こそ口に入れようとした大福をカーペットの上に無惨にも落としてしまう。
「は?なんて?」
乾と黒川が1LDKの家に一緒に暮らし始めて2ヶ月が経とうとしている。
二人とも今まで家事などをしたこともほとんどないが掃除や洗濯は覚えようとしなくても出来るものだし、食事は買ったり今は便利な配達もあるのでそれを使うことが多かった。
たまに作ることになっても乾は戦力外として食器などを出してもらうばかりで黒川が作っていたし、前に鍋で煮込んでいるカレーを見とけと言えば本当にただ立って見ているだけの姿を忘れることはないだろう。
そんな乾が突然、何を思ったのか飯を作ると。
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