青春「影山ァ!」
(なんで……)
「待ちなさい!」
(アイツに……あのチビに……!)
「コラァ!」
(追いかけられてんだ!?)
影山飛雄。その名を知らない奴は学校にはいない。バレー部に所属している天才セッターと呼ばれている俺だが。その天才故に、周りからは嫉妬されることが多い……
「てめぇ、なんで後輩がでしゃばってんだよ?」
(うるせぇ……)
「いいよな、天才は……」
(うるせぇ)
「影山くん、君みんなと合わせる気はあるのかい?」
(うるせぇ!!)
うんざりだった。毎度毎度、俺がどんな努力をしてここまでバレーをしてきたのか知らないくせに、周りの奴らは出しゃばるな、もっと上手くやれるそんなばかり!
だから、1年の終わり……
「はぁ、はぁ……」
俺は、上級生の奴らを殴って停学処分を受けた。
何もかもが耐えられなかった。自分を評価してくれるやつは誰もいない。
誰も、俺自身を見てくれない。
2年の春には、周りの噂の標的になり誰も近づかなかった。友だと思っていたやつも次第に離れていった。
部活は、停部の期限は切れたがどうも行く気になれなかった。
あれから、ボールには触っていない。
あれだけ、綺麗に手入れをしてきた手は、もうセッターの手ではなく時たま訪れる不良どもを一掃する目的となっていた……
月日は流れて3年の春
今日も、授業をバックれて帰ろうとした……が
「影山ァ!」
何故か今俺は、オレンジ頭のチビに追いかけられている。
もう一度言う、スーツ姿のオレンジ頭のチビが俺の後ろを猛ダッシュで追いかけている。
「なんなんだこいつ!?」
俺は、路地に入り目の前にあるフェンスを飛び越えた。あの身長ならこの高さのフェンスは飛び越えられないは……
「よっと!」
「は?」
その姿は、一言で言って綺麗だった。
チビとは思えないほどの脚力。自分の身長よりも倍あるであろうフェンスを軽々と超え……
「あ?!」
「うぇ!?やば!どいてどいて!」
「はぁ!?グエッ!」
チビの姿に見惚れていた俺は、たまたまそいつの落下地点にいて気がつけば避けることなんて出来なかった。
「痛たたたっ!影山大丈夫か?」
「っ!何すんだボケェ!」
「はぁ?!先生にその言い草はないだろ!」
「っ!?先生?」
「おう、紹介し忘れてたな!今日からバレー部の顧問になった日向だ!よろしくな!影山!」
「は……はぁ!?」
これは、高校生活最後の年。新任の先生と生徒が過ごす青春溢れる1年の物語。