その年、清談会は金鱗台で開かれた。
各世家の宗主たちが集まり、交流を深める中、江澄はひとり杯をかたむける。視線の先にあるのは沢蕪君の姿である。
藍家宗主は二人の宗主とその娘に囲まれて、にこやかに話を交わしている。その手には杯があるが、彼が金丹で酒精を消していることは知っていた。
いまや四大世家の宗主で妻帯している者はいない。金家宗主は若年に過ぎ、見合いに失敗続きの江家宗主と、そも見合いに応じない聶家宗主となれば、己の娘を売り込む先は自然としぼられる。沢蕪君と称される彼の人には気後れしそうなものではあるが、閉閑を経て、彼はふしぎと気安くなっていた。
江澄は盃を重ねた。
人に囲まれる沢蕪君をながめていても具合が悪くなるだけであるとわかっていたが、ちらちらと様子をうかがうことをやめられない。
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