あなたに似合いのひだまりの花 「お兄ちゃん、こんなとこでどうしたの?」
「えっ、と、ボクは……っ」
「だれかに用事?」
「怪しいな、マムのところに連れて行こうぜ!」
子供たちにわらわらと囲まれ、大きな花束を背に隠したまま少年は施設の中へと案内された。
朝からそう騒がしくしていると流石に気になって、セレスだけでなくサロメやアドルフも中から出てくる。
「皆、どうしたの?」
「変な奴いた!」
「変な奴って……マティスくん!?」
どうしてと目を丸くするセレスに恥ずかしそうにぱっと顔を上げたマティスは、ずっと背に隠していた大輪の花束をセレスに渡す。花束の花は珍しい、セレスの髪に似た色の黄色の薔薇の花束だった。
「せっ、セレスさん!」
頬を赤く染め、あからさまに緊張していることが目に見えるマティスの様子に思わずセレスも息を呑む。
「…す、すっ、好きです…!ぼ、ボクと…デートしてくださいっ!」
再会を果たした時からずっと何度も変わらない真っ直ぐで一途な愛を伝えてくれるマティス。そんなマティスにドキドキとセレスの心臓は音を立てる。彼と共に生きたい。リライバーになりたい、という願いからその花束を受け取り、胸いっぱいに抱いた。
「そういうのは、デートしてくださいじゃなくて付き合ってくださいっていうとこじゃないの?」
「えっ……?あっ……!?」
慌てるマティスの手を取って、向日葵のようにセレスは笑う。
「マム!アドルフ!皆!デートに行ってくるわね!」
「い、行って、きます……」
子どもたちの抗議の声をよそに楽しそうな笑顔で出かけていく義妹の様子を見てアドルフはふっと頬を緩ませる。
「義兄ちゃんとしては複雑?」
「いや…セレスが、大切な義妹が幸せになるってんなら…これほど幸せなことはないさ。マム」
いつの日か、二人の結婚式を見たいと心底願うアドルフだった――。
-Fin-