遠くない未来 「…僕、ユウキが死んだらいやだなぁ」
「えっ!?」
突然物騒なことを口にするものだから思わず驚いて顔を上げていた。
「ど、どうしたの…何かあった?伊吹」
「うん、本を読んでたんだけどね。この話がループ物っていうのかな?大切な子のために時間を戻して、最良の未来を目指すっていうものなんだけど…読みながら、僕だったら目の前でユウキが死んじゃったら世界、滅ぼしちゃうだろうなって」
「さらっと怖いよ!?」
「だってそれくらい僕にとって君は特別だから」
「……」
思わず黙ってしまう私を見て楽しそうに伊吹は笑った。
「い、伊吹…」
こほん、と咳払いをすると伝えたいことを伝える為に伊吹の両手を握る。
「…もし、もしだよ?そういう危ない目にあったとしても…きっと、伊吹が助けてくれるでしょう?」
「…うん、当然君を守るし助けるよ」
「それなら大丈夫だよ」
自分で言っていて無責任だとは思うが伊吹を安心させる方法がこれ以外思いつかなかった。けれど伊吹が元気を取り戻したようでほっと安心する。
「って、ちょ、ちょっと待って伊吹!」
「むぐ」
突然顔を近づけてくるもんだから私は思わず両手で伊吹の侵攻を防いだ。
「…だめ?」
「だめだよ!だって…伊吹はまだ、自分の気持ち分かってないじゃない」
「でも僕はユウキにキスしたいなって思う。それだけじゃダメ?」
「ちゃんと形をとらえないとだめ。後戻り出来ないんだから」
「…わかった。でもその時、ユウキの言うような【好き】だったらキスしてくれる?」
「…考えておくね」
臆病な私はそう答えることしかできず、けれどそんな私に伊吹は楽しそうに笑う。そんな伊吹を見つめながら、遠くない未来来るかもしれない明日に思いを馳せたーー。
-Fin-