落ちるだけの夜「浮奇、本当にするの?」
真剣な瞳が、仄暗い空気に光った。
「もう、しつこいよ。いいって言ってるでしょ」
中々手を出してくれないので、焦れた僕は自らの手でお気に入りのパーカーを脱ぎ始めた。
普段なら顔を真っ赤にしてあたふたするであろう彼は、まだ真面目な顔で黙ってこちらを見つめている。
その圧に、心臓が弱い音を上げた。
「スハ〜そんな顔しないでよ〜」
彼の滑らかな頬を両手で大切に包んで、空気を和ますために絵文字さながらのSadgeな顔を作ったつもりが、僕の目からは涙が零れていた。
「浮奇!?ごめん!そんなつもりじゃ」
彼はそんな僕に目を見開いて驚き、あたふたする。
それは全くもっていつも通りの、格好良いのに不器用な彼そのもので、僕は泣いたまま笑った。
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