惰眠『あ、良かったオリバー君、出てくれて』
開口一番そういわれて首をかしげる。確かになんだか中途半端な時間ではあるが、今日は仕事は休みだと伝えていたはずだし――それに。
「なんか元気ないねレオス君、どうかした?」
『いやあ……』
聞けば朝から優雅に二度寝をかまし、たっぷり眠ったはずなのに、どうにもうららかな日の光で眠たくなって。
『誰かと話せば目が覚めるんじゃないかと』
「安直じゃない?」
『いいじゃないですかー。オリバー君話してましょうよ~』
夜のコラボはさすがに寝ブッチするわけにはいかないでしょお~?
「そうだけど。死ぬほど濃いコーヒーでも飲めばいいじゃん」
飲んだんですけどねえ。吐息交じりの声は本当に眠そうだ。
『こんなに暖かいの、久しぶりじゃないですかねえ……』
暦の上ではもう春、というけれど、実際は雪が降ったり雨が降ったり、肌寒い日が続いていた。
少し窓を開けても、日の光のぬくみが勝るような日は――確かに久しぶりかもしれない。
「まだ二月だけど。意外とはやく春が来るのかもね」
『春が来たら、駆け足で夏が来ますよ』
デビュー1年なんて、あっというまだ。小さく笑いながら、「目は覚めた?」と聞いてみる。
『駄目ですね。オリバー君在宅ですよね、今からそっち行きます』
「なんで?」
『どうせ自枠取るわけじゃないしいいでしょ。私寝たらごまかしてください』
「隣にいるんなら殴って起こすよ!」
返事を待たずぷつんと切れたスマホを見てため息。コーヒー用意しといてやるか、と小さく苦笑して立ち上がった。