長く伸ばした黒髪を愛おしく梳く彼の手が心地よい。
梳いて欲しいと言えない私に、彼は心を読んだようにして欲しいことをしてくれる。これ以上甘やかしてどうするの？と告げると恋人は甘やかしてよいものなのですよと返された。
ずるい。私だってあなたを甘やかしたい。お父さんみたいに。ねえベナウィ。

―『これ以上甘やかして、どうするの』
※多分ベナアル


あんたは槍で俺はあんたの盾なんですせ、と誇らしく私を見る彼は非常に頼もしい存在であるが。
私がただ黙って守られるだけの存在でないことも知っておいてほしいのだと、槍の柄に手を滑らせる。
血と汗と泥に塗れて尚前へ。後ろにいる貴方を守るために。
攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ、と。

―『よくいったものだ、』
※二人の関係性の考察


崖の下。上からは爆発と怒号と悲鳴。
痛む体に鞭打ち、彼の元へ這う。額に流れる血。
うつ伏せた胸元の血溜まりに俺は絶望を見た。肩を揺すっても、彼は目覚めない。ならばせめてこの身体だけでも。覆い被さるように守ると目の前が揺らぎ、死の闇が降りてくる。
地獄まであと少し。その時は彼とともに。

―『生存確認』
※公式インタビューにあった男キャラの戦死案からの話（散り）


この世界に来てから悪夢を見ない夜などない。闇の中で探るとその手を握る。このせいで不名誉な名で呼ばれていることを知ってはいるが安らぎを得たい、彼がいてくれる事実にほっと息をつく。
一人ならもっとどうして良いか分からなかっただろう。大丈夫、きっと悪夢を見なくなる日はやってくる。必ず。

―『悪夢はもう見ない』
※ロスフラ軸のミトと仲良くしてるベナウィがしばらくの間クロウと同室だったせいで、不名誉な二つ名（朱の姫君）で呼ばれるようになったと言うアホみたいな設定でした


優しい瞳に目を奪われた。
父のような低く甘美な声に、私は手を伸ばそうとして思いとどまる。
これ以上近づいてはならない、と本能が警鐘を鳴らす。駄目だ、駄目だ、駄目だ……。
これは私じゃない。抗えない何かに背中を押されるのは私の本意ではない。私が私でなくなる前に、貴方の手で、早く、私を。

―『目を奪われる』
※亜人補正に抗おうとするベナウィがすごく見たい
「分水嶺にて」の根源は恐らくここ（心酔していた相手に補正があることを知って生きていけるか？）


悪夢を見たので彼の部屋へ行き彼を起こす。ぼんやりした顔で私を憂いて心配してくれたから、恐ろしいと弱音を吐く。
私の采配一つで皆が死ぬ。お前も、と言うと彼はエルルゥ様のようにはいきませんがと私を抱きしめ背中を撫でてくれる。出来た奴で困る。
「あなたの腕の中で永久に眠りたい」と願う程に。

私を抱き起こす彼の顔が歪んでる。悲痛な叫びに静かに笑む。貴方の元で武人としての本懐を遂げられて、もう思い残すことなど。
そう告げると貴方は益々顔を歪めて涙を流し何度も私の名を叫んだ。まるで地獄から引き戻そうとする様に。
私はやっと貴方の腕の中で永久に眠れる、永遠に貴方の心の中にいる。

―『眠ってしまおうよ』
※adamant faithの歌詞から/ハクオロさんの見た夢？
元ネタのプロットが存在します


「確かに質素なら倹約にはなるが」
「恐れながら聖上、格式や威厳を損なわない様にして頂かないと困ります」
私の独り言に、木簡に判を押し器用に巻いた補佐が返事をする。
「そんなもんか？」「そんなもんです」
「私のじゃなくて、お前に新しく誂える礼服の話なんだが」
木簡を盛大に落とす音がした。

―『お前の話だよ』
※元ネタのプロットが存在します