「…魔法が、使えなくなった?」
ティーセットが音を立てる。テーブルという上等なものがないこの部屋では、パソコンの置かれた机しか叩きつけるものがなかった。いつものようにびくりと肩を震わせることもせずに、イデアは項垂れていた。
燃える青い炎の髪の毛は火力を失くしていて、イデアの感情をそのまま表しているようだった。まるで水でも被ったみたいだ。静かに俯くイデアの横顔に、アズールの視線も厳しいものになる。
ベッドの上で丸くなり、毛布を頭からかぶったイデアは、自室にいるというのに、式典に出ている時のように覇気がない。
「イデアさん」
問いかけてみたところで、返事はなかった。人を呼びつけておいて随分な対応だ。ふう、と溜息をこぼして、アズールはいつもイデアが座っているゲーミングチェアに腰掛ける。
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