天体観測 顔を上げると、数え切れないほどの星々が瞬いていた。視界にはっきり捉えられるもの以外にも、ピントがぼやけたような小さな星や、赤っぽい光りを放つ星もある。
かつての人類は、闇夜に浮かぶ星を目印にしたり、星と星を線で結び神々が織りなす物語を創造した。その上、出来上がった星座に自らの運命を委ねたりも。遥か何千光年先の光がこの地球に届いているだけなのに、おかしな話である。
それでも星座の元になった神々は、おかしな逸話があるものばかりで、聞く分にはちょうどいい退屈凌ぎになるのだ。
『皆さんは織姫と彦星の話を知っていますか』
録音されたアナウンスが暗室に響く。
知っていない者の方が少ないのではないかと内心で突っ込みを入れた。日本の初夏はまさにその二人を押し出しているではないか。実際このプラネタリウムでも、夏の星座特集としてその話題を取り上げている。
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