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    Kameiyafwon

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    Kameiyafwon

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    こがセカであったるつかめ

    きっと星つかで本か何かになる

    ##るつかめ

    「なぜ出張の土産が映画キャラクターのぬいぐるみなのだ……」
    「僕や寧々の影響だろうねぇ」
    「だとしても買いすぎだ!」
    夕方、陽が少し落ちた頃。ぷんぷんする司くんの腕を占領するは、かわいいかわいい映画のキャラクターのぬいぐるみたち。
    珍しく、今日はバイトもなく練習もない放課後だった。僕の親に一度会ってみたいという司くんのお願いを叶え、うちの親は親で、いつも愚息が世話になっていますと言って、これでもかとお土産を押し付けた。
    どうやら出張で泊まったホテルが関西にある映画をベースとしたテーマパークの近くだったらしい。ホテルのお土産コーナーには、これでもかと映画のクッキーだったりぬいぐるみだったりが置いてあったようで。好きなものが分からないからとりあえず一通り買ってきたらしい。
    結果、今の司くんの出来上がり。セカイのみんなを思い出すようなその光景に思わず口元が下がってしまう。
    クッキーやお菓子といったものを僕が、ぬいぐるみを司くんが。男子高校生にしてはちょっと可愛すぎるチョイスだけれど、妹の咲希くんにもいきわたるだろうから結果オーライだ。
    夕方の街をこけないように、ゆっくり歩く。ここのあたりは住宅街だから、公園も多く、子どもが和気あいあいと遊んでいることも多い。受け身が取れない今の司くんはより慎重になって歩いていた。
    だからだろうか。

    「ん?」

    足を止めて、怪訝な声で司くんが公園のベンチを見ていた。同じ方向を見てみると、なんの変哲もないベンチに見える。
    「類、ベンチに行くぞ」
    「ちょっと休むかい?」
    「いやそうではない……が、まあそうしよう」
    「?」
    司くんはベンチにぬいぐるみを置くと、しゃがみ込んだ。そして、ベンチの下に腕を伸ばす。
    「……これは?」
    司くんの腕は、なにやら蓋の閉じられた段ボールを引っ張り出した。最近は霽れを待つ必要もないほどの晴天続きだというのに、その段ボール箱は湿って角が崩れてしまっている。
    「何やら訳あり品、のようだね」
    「ああ。爆発物とかではないにしろ、子どもの遊び場だ。危ないものだったらまずいだろう」
    「なるほどね。じゃあ、開けてみよう」
    「あ、馬鹿、もう少しはためら───……」

    ぱかり。

    「おや」
    まんまるの大きな黒い目。口元はもともとの造形もあるんだろうけど、なんだか笑っているような愛嬌のある顔。よちよち歩きはなんとも庇護欲をそそる。
    ハッキリ言おう。
    「可愛い亀だねぇ」
    「亀だな」
    段ボールの中にはキャベツの破片と、水の入った小さいお皿。よくよく見れば、段ボールには『拾ってください』と子どもの文字で書かれていた。
    「捨てられたのかな」
    「そうだな……なんとかしてやりたいが……」
    (あ、駄目なんだ)
    司くんの家にはいくつか決まりごとがある。それ以外だったら基本的になんでも許される。そういう時は割と即決なのだけれど、言いよどむということはつまり駄目ということ。
    なんとかしたいのは僕もだ。生物を見殺すなんて出来ない。自然の摂理というなら何も言わないが、人為的なものならば。
    「僕の家で引き取ろうか」
    「いいのか?迷惑では……」
    「このままじゃ夢見が悪くなるだろうし……それに、かわいいじゃないか、この子の顔」
    指を差し出してやれば、餌と勘違いしているのだろうか口をパクパクさせている。この様子ならまだ元気なのだろう。
    司くんもその様子を見て安心したようだ。
    「……そうだな。頼めるか」
    「任されたよ」
    とにかく、今は司くんの家に荷物を送り届けるのが先だ。一度段ボールを元通りにしておく。
    「またあとで来るからね」
    亀はつぶらな瞳でこちらを見た後、ふい、と目をそらしてしまった。なんというか、照れ隠ししている司くんのようで面白い。
    「じゃあ、司くん、行こうか」
    「ああ!」
    改めて、荷物をしっかりと抱える。
    (はやめにお迎えに来るからね、亀くん)
    少し足早に、僕たちはまた歩き出した。
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