ごぼごぼごぼ 湯船に浸かると、あー、と気の抜けた声を出してしまうのは何故だろう。おじさんくさいだろうか。まだ「あ」に濁点が付いていないだけマシではないだろうか。お湯に顔面をつけて、あー、と叫んでみると、ごぼごぼごぼと泡が破裂した。
今日あった出来事を反芻するのに、湯舟は向いている。昼間はインタビューがあった。事前にいくつか質問を予想しておいたのが功を奏し、問題なく答えられはしたけれど、面白みにかけてただろうか。学生業との両立は難しくないですか。学校でも毒舌キャラなんですか。いいんだ、僕は僕らしく答えただけだ。プロデューサーに許可も得ている。
あー。ごぼごぼごぼ。髪がお湯の中で揺蕩う。いつまでもこうしていたい、と水の中で思うことがあるのは、人類が海から生まれたからかもしれない。それこそクリスさんが喜びそうな話題だ。
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