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    komaki_etc

    波箱
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    北村Pの漣タケ狂い

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    舞田。初詣の待ち合わせ

    けらけらけら けらけらけら。目の前にいる女性が笑っている。けらけらなんて言ってないのに、どうしてけらけらって言うんだろう。俺はその場所をそっと移動した。電話の声が筒抜けだったからだ。「だからさぁ、スキー行こうって!」という声を背中に受けながら、自販機の前まで行く。百四十円かあ。高いなあ。
     ミスターはざま達との待ち合わせに、ずいぶん早く着いてしまった。人混みの少なくなった今なら初詣に行けるんじゃないかとの算段だった。ミスターは去年、大凶を引いたっけ。なるべく高いところに結んできたから、きっといいことがたくさんの一年だったはずだ。凶を引くのは、その日が一年の中で一番悪い日となって、あとは右肩上がりなんだって、ミスターやましたに教わった。なんだそれは、とても素敵じゃないか。そんなら全然、凶ではないじゃないか。はやくおみくじを引きたい。どんな結果でも面白い。
     けらけらけら。さっきの電話している女性の声がここまで届く。よっぽど楽しい電話なのだろう。俺は百四十円のリンゴジュースを買う。厚着をしすぎて喉が渇いた。
     スキーかあ。いいなあ。撮影で行かないかなあ。リンゴジュースは程よい甘さで、身体が潤っていくのを感じた。甘いものって、生きる心地がして好きだ。
     今日、ミスターやましたと一緒に来なかったのは、待ち合わせをしたかったからだ。新年最初の、三人での待ち合わせ。駅で集合するのって、それぞれ別々の道を歩いてた人がひとつになる感覚がして好きなんだ、と告げると、それならば、とすぐにノッてくれた二人が好きだ。
     好き。好き。好きなものがたくさんある。忘年会と称してミスターやましたの家で囲んだ鍋、そこで酔っ払うミスターはざま。北斗からも、プロデューサーちゃんからも、事務所のみんなから新年の挨拶が届いた。ひとりひとりにメッセージを送るのは、まるでおみくじの吉を分けてるみたいな気分だった。
     seize the day、と言う言葉がある。その日を掴む、今を楽しむ。好きな訳は、今日という日の花を摘め、というものだ。今日という日の花。毎日、花は咲いていく。俺たちは花に囲まれて生きている。花を摘みながら歩いている。今日から一年、毎日花を摘んでいったら、とても大きな花束ができるな。それはきっと色とりどりで、満開の花も蕾も、萎れてる花だってあるんだろう。だけど、絶対、愛おしい。自分の軌跡が花束になる。そんな一年にしたい。みんなもそうであってほしい。
     晴れやかな横顔がたくさん行き交う駅の中心で、けらけらけら、と声が響く。けらけらけら。声には出さず、俺も笑う。二人が改札の向こうに見えた。好き。好き。この瞬間が、大好きだ。
    「あけましておめでとう」
     と言う二人に、ハッピーニューイヤーと応えた。「じゃあ、蔵王に行こう」という女性の声に背中を押され、俺たちはけらけらけらと歩き出した。
     いま、花が三つ、咲いている。
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    kurautu

    DONE一週間ドロライさんよりお題「クリスマス」お借りしました!
    雨とクリスマス 初めての恋にあたふたしてほしい
    雨は 冷たい雨が凍りついて、白く儚い雪へと変わる。そんなことは都合よく起きなかった。僕はコンビニの狭い屋根の下で、雑誌コーナーを背中に貼り付けながら落ちてくる雨を見上げていた。
     初めてのクリスマスだ。雨彦さんと僕がいわゆる恋人同士という関係になってから。だからといって浮かれるつもりなんてなかったけれど、なんとなく僕たちは今日の夜に会う約束をしたし、他の予定で上書きをする事もなかった。少しだけ先に仕事が終わった僕はこうして雨彦さんを待っている。寒空の下で。空いた手をポケットへと入れた。手袋は昨日着たコートのポケットの中で留守番をしている。
     傘を差して、街路樹に取り付けられたささやかなイルミネーションの下を通り過ぎていく人たちは、この日のために用意したのかもしれないコートやマフラーで着飾っていた。雨を避けている僕よりもずっと暖かそうに見えた。視線を僕の足元へと移すと、いつものスニーカーが目に映る。僕たちがこれから行こうとしているのは、雨彦さんお気に入りの和食屋さんだ。クリスマスらしくたまには洋食もいいかもしれない、なんて昨日までは考えていたけれど、冬の雨の冷たさの前には温かいうどんや熱々のおでんの方が魅力的に思えてしまったのだから仕方がない。
    1915