五線譜と愛しい人 ある日の夜、店じまいを終えてごみを出しに外へ出ると人が倒れている。ぎょっとしながら駆け寄ると倒れているというより寝ているようで、ただの酔っ払いかと思いつつも無視はできないので一応声をかけてみる。
「なあ、起きぃって。こんなとこで寝たらあかんで」
声は届いていないのか反応はなく、仕方なく肩を揺すって再度声をかけるとゆっくりと開いていく瞼。切れ長のその瞳は寝起きだからかゆらゆらと揺れており、視線が合うと一瞬停止してそろりと口が開く。
「…だれ…?」
「そこで店やってるもんや。こないなとこで寝とらんと、はよ帰りや」
すると、ぽつっと鼻先に当たる雫。ぱらぱらと降り出した雨に、そういえば夜は雨が降ると予報が出ていたことを思い出す。それでも男は気にした様子もなく、また寝に入ろうとする。
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