息吹 夕食に選んだ店から最後に出た一組は、僕たちだった。
カウンターから掛けられるありがとうございましたの声に小さく会釈をして、シックなデザインの引き戸を開けて外に出る。店から少し離れた場所で振り返ると、ちょうど軒先の照明が落ちるところだった。
日中は地元の人が行き交う商店街。先ほど出てきた和食屋はその一角にあり、ガイドブックにも載るほど人気の店だが、この土地そのものが観光人気の高い場所ではない。やや混み合っていた店内の客割合は、常連六割、外国人観光客が二割、僕たちのような国内旅行者が二割といったところだ。お酒も楽しめるが、夜の日替わり定食を食べてさっさと帰る一人客も少なくはなかった。
入店時間が遅かったので、比例して退店も閉店ギリギリになってしまったが、常連たちも皆粘って同じタイミングで会計をしていたので、気まずさがなかったのは幸いだった。
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