煙と一緒にコンビニに入って買い物を終えた後、ふと猫又の後ろにあるタバコが目についた
タバコが吸いてぇなぁと言っていたKKの言葉を思い出して、目で追っているとKKの声が頭の中に響いた
「45番」
「もしかして、あれ吸ってたの？」
「そうだ」
右手がスッとその番号の付いているタバコを指差す
「お客様、45番ですかにゃ？」
「うーん…」
「どういたします？」
「じゃあ、一箱ください」
「承知致しましたにゃ」
そう言って差し出されたタバコは、メンソールと書いてある
吸われる際はお外の喫煙所でお願いしますにゃーと言われながら店を出る

「珍しいじゃねぇか暁人」
「いや、誰かさんが吸いたい吸いたいって言ってたし」
僕が吸ってもKKは味わかるの？なんて聞くと、身体借りりゃあできるぜ、なんて声が返ってきた
「お前さん、タバコ吸った事あんのか」
「ちょっと位はね」
あ、ライターとタバコのパッケージを開けてから気がつく
「カバンの一番外のポッケに入ってるぜ」
「あ、ほんとだ」
ジィ、っとジッパーを開けて中を見るとそこには言われた物が入っていた
ジッポーとかいう、お洒落なやつだ
「これ、使ったことないんだけど」
そう言うと、右手が勝手に動いてカキン、と蓋が開けられたと思うとすぐに火がついてしまった
「今の感覚わかったか？やってみろ」
「そんな事言われても」
何回か硬い所を回しながら指をスライドさせると、ようやく火が自分で着けられた
そのまま、何度か練習すると何回かに一回はつけられるようになった
「身体、借りるぞ」
そう言ってKKが新しいパッケージの開く
ぎちりと詰まっているタバコを起用に引き抜くと、口に咥えて火がつけられた
すう、と肺の奥深くまで吸い込むと咽せてしまった
「んだよ、味わからねぇだろ」
「だっ、て…これ、咽せちゃう」
こんな強いの吸った事ないしなんて言うとやっぱりお子ちゃまだな、なんて言われてムッとしてしまう
今度は自分でタバコに口をつけて、口の中だけに煙を充満させた
舌が、痺れるような煙の味にメンソールの匂いがする
ふう、と少しだけ口に含んだ煙を吐き出すと、うめぇなぁなんて声が聞こえてくる
「懐かしい味した？」
「もっと肺の奥深くまで吸い込んで、味わいてぇ」
そう言ってくくっと笑うKKの声につられて僕も笑った
もっと、味わって吸ってみたい
今度はもう少し、深く吸い込んでみる
肺に入れるってどんな感覚なんだろう、そんな事を考えながら息をしようとすると、肺の中に吸い込まれていった
先程よりもじんわりと、肺の血管の中にニコチンが溶け出していく
この感覚なのかな、なんて思いながら吐き出す
もう一回、今度はもっと深く、深く
長く吸い込んで、吐き出した後に目を閉じると、瞼の裏にKKが嬉しそうに笑っているのが見えた
「美味しい」うめぇ」
言葉が、合わさった
美味しいね、だろう？
そう言ってKKと一緒にタバコを燻らす
「ごちそうさん」
「もういいの？」
暁人君の肺を悪くしちゃ困るしな
そう言って、KKが僕を頭を撫でた気がした
「今、子供扱いしたでしょ」
そんな事ねぇよ、と言ってKKが笑った
「また、コンビニあったらその時に一緒に吸おうね」
「俺の気が向いたらな」
「強がらなくていいのに」
「強がってなんかねぇよ」
そう言ったKKは、もういくぞと言って右足を勝手に動かした
わかったよ、と返事をして自分で歩き出す
次の鳥居を目指して、二人で