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    kadekaru_kaname

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    kadekaru_kaname

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    学生時代半ロナ、半は踏み込む時は無遠慮だけど、本気で傷付いている時には一歩引きながら日常のレールに戻してくれそう。

    ˙ᑎO⅄ ƎΛO⅂ I物が壊れる瞬間が好きだった。それと同じ位に美しいものが好きだった。けれど、美しいものを壊したいわけではなかった。ただ漫然と青空の下で考える道楽の一つだ。もしかしたら中二病とか言われる類のものなのかもしれない。そうだと断定されたら、否定できない自分が居た。好きなのは瞬間だ、突沸のように盛り上がった後の残骸に興味はなかった。そんな俺は何処に行ったのだろうか、探す暇も無くなっていた。
    「ロナルド、遅いぞ」
    「オメーが呼び出したんだろうが、カメ谷は?」
    「すぐ来る、部活に課題を出したら合流予定だな」
    「おっけ」
    友情は美しいと思う。だから壊したくない。でも半田にされる嫌がらせはどうなのだろう。壊したら、何になるのだろう。今の俺は変化を怖れていた。特に今から特別な事をするわけでもない、ただ来週からテスト週間だから集まって勉強をしようなんてそんな簡単な会合だ。別に友達同士でなくとも、やることだ。だが、それでも俺には大切な時間だった。此処に俺が居る。それの証明でもあるからだ。半田は別にそんな重く受け取っていないかもしれないけれど。
    「今日どれからやる?」
    「初日の日程を覚えているか」
    「現国、地理、選択科目」
    「存外馬鹿ではないようだな」
    「これくらい覚えてるわ! というか俺は馬鹿じゃねえし!」
    「ならテストの合計点で貴様が俺に勝った回数を行ってみろ」
    「……一回」
    「残念だったな! 二回だ! 今回も勝負するか?」
    「勿論、ダッツでいいんだろ」
    この勝負にカメ谷は参加しない。正真正銘、俺と半田の間にだけある約束だ。一度、カメ谷にも「やる?」と聞いたが、馬鹿は馬鹿だけどお前ら頭は良いからなと断られてしまった。俺と半田の点差は大凡僅差で、たまに解答欄をミスると大差で負ける。僅差の時は大体選択科目で負ける。それもそうだろう、俺と半田は同じように勉強をしているし、こうやって分からないところを話し合うこともしている。テスト対策は美しいか、それは分からない。でも壊したくない時間だと思う。外は雨が降っていた。ぽつり、ぽつりと流れる雫たちをぼんやり見ながら教科書そっちのけで間の抜けた話を半田と交わす。時折、半田が俺の意識を戻すためにシャープペンシルの先で頬を突く。痛いな、と思うがその痛みさえも丁度いい。
    「なんか、空がさぁ。夕焼け色してないと怖くならねえ?」
    「雑談にウツツを抜かせるとは良い御身分だなロナルドォ……」
    「違えって、一般論!」
    「この俺に一般論を説くのか?」
    あ、まずいと瞬間的に思う。俺は人間だし、カメ谷もクラスメイトも人間が多い。だから、半田がダンピールだという事をたまに忘れてしまう。ダンピールの暮らしが人間とどれ程違うのか、そこまで込み入った話を俺達はしなかった。だが、踏み込んではいけない境界線だと感じていたのだ。俺は今そのラインの上に足を置いている。垣根を壊したら、どうなるんだろう。半田は、きっと泣かないと思う。いつもと同じ表情で、いつもと同じ声色で、いつもと違う行動をする。その道が明確に見えた気がした。だから俺はそこから足を一歩引く。
    「別に誰に何を言っても良いだろ」
    本当は薄っすらと気が付いている。半田がダンピールであることに誇りを感じていると同時に不安定な心地を抱いていることに。俺はそれに干渉することは出来ない。いや、干渉しないという干渉をしている。お互いに手を伸ばして、手を掴めないギリギリの位置で俺は半田を見つめていた。
    「そうだな、貴様が配慮の足りないヤツだということは知っている。で、次はどこだ」
    「あー……、此処。筆者の気持ちの汲み取り方が下手なんだよな俺」
    「暗記や公式を覚えるのは得意なのにな」
    「うるせえ、所詮他人なんだから気持ちなんて分かるわけないだろ、誰でも」
    すると半田は普段はしない、口許に手を当てて堪える様な笑い方をした。なんとなく半田の笑い方というのは豪胆というか吹き飛ばすような感じが多かったので、印象に残っている。
    「そうだな、俺も貴様も他人だ。考えなんて分からない」
    「ましてや作家の気持ちなんて分かんねえよ。……いや、でも半田はそういうの得意だよな?」
    「俺は推測が立てられる。色んな人間が恐らくこのように感じているのではという読み解きだな。貴様はそこが下手なのだ」
    ふうん、と他人事のように流して聞いた。半田が要点を掻い摘んで教えてくれている最中にカメ谷も合流して三人で沢山の問題の傾向と対策を考えたのは、美しいと思う。帰り道、二人と別れて、置き傘を使って帰路を辿る。やはり夕暮れのない一日は物足りない。黒が紺になり朝焼けを迎えて、腹の立つほどの青い空を通り超え、白に近い天が夕焼けに染まりまた暗い虹のように黒へと戻る。そのプロセスが、一日には必要だと思うんだ。ああ、そういえば今日は何も壊していなかった、そう思って珍しいと感じた。刹那だが、この誘惑に勝てない時もあるのだ。壊すものは色々あった。誰にもバレないように、誰にも迷惑をかけないものを。無くてもいいものを、壊し続けていた。いつか地獄に落ちるだろうな、例え対象が無機物であっても。そこにあったものを無かったことにするのだから。でもこれは生まれ背負った業のようなもので、誰に止められるものでもなかった。だって、他人は他人だから。仕方ないから水溜まりをびしゃりと壊すように踏みしめた。

    それは俺にとっての青天の霹靂だった。テスト期間もすぐそこに迫っているような一日の延長線上だった筈なのに。俺の夢は兄貴のような退治人になることだった。だから帰り道に下等吸血鬼が出たと聞いた時はチャンスだと感じた。それなのに、結果としては、俺は兄貴に庇われ、兄貴は退治人を引退して家を出ていった。ヒマリが中学に上がってから兄貴は退治人としての仕事に集中していたので、そんな家にいる時間は元から無かったのだが、ご飯はちゃんと用意してくれていた。今はそれもない。俺が日常を壊したのだ。日常は美しくともなんともない。だが、本当に壊れて良かったものなのだろうか。破片を取り出しては感傷に浸る。どうすりゃ良かったんだろうな、あの時の俺は。結局、俺は兄貴に認めてもらうこともなく、変わってしまった事実だけを受け止めている。金曜日、来週から本格的にテストが始まるといったところで、こんな事が起きてしまい、俺は上の空だった。授業中にもぼんやりとしていたし、体育の時間も怪我をした。
    「ロナルドくん大丈夫?」
    「無理しなくていいからね」
    「なんか心配事があったら相談してくれていいんだからな」
    「もしかして、お家で何かあった?」
    「ねえ」
    「なあ」
    「おい」
    やめてくれ、と叫びたかった。そっとしておいてくれ、頼むから俺から俺を創り上げないでくれ。人の眼が俺を見る。黒い眼が表情も感慨もなく俺を責め立てる。善意なのは分かっている、愛想を振りまいて何事もないように繕わなければという気持ちもある。だが、出来ないんだ今は。周りを囲繞する黒の中へ怯え、顔を上げると漆黒の隙間に輝くような金を見つけた。その金は俺の手を引っ張り眼から連れ出してくれた。助かった、とかそういうんじゃない暖かさ感じてしまったのだ。
    「……半田、なんだよ」
    その金は俺の手を引き、屋上へ続く階段に引っ張り上げてくれる。ただ、此処は鍵が掛かっている筈だと思うと、半田は躊躇なく血液錠剤を口にしてブーストした力で扉をぶち破った。先ほどまで心臓から垂れていた血が今は、この扉後からどうすんだろうに変わっていく。
    「別になんでもない、だがもう放課後だろう」
    「悪ぃ、テスト勉強さ、俺今日はパスしてもいい?」
    「それは構わないが、見ろ」
    半田の指さした方向には沈む太陽が映っていた。夕暮れ。ああ、あの時の会話を覚えていてくれたのだな。ハッキリと会話を思い出すことは出来ない。埋もれる程に半田とは話しているから。でも、多分夕焼けがないと怖いとか、そんなことを言った気がする。これは半田なりの慰めなのだろうか。そうならば、心配を掛けてしまったなと己を悔いる。それでも、顔も見えない黒の中で星の様に輝く金色は俺の救いだった。
    「帰るのか」
    「んー……もうちょい見てる」
    「そうか」
    このような関係性を表層だけで生きている奴らだと揶揄する人たちも居る。だが、俺はやはり此処が俺と半田の適切な距離だと思うのだ。嫌がらせは朝された。多分、その時に俺が本調子じゃないって気が付いたんだろう。こいつ人の気持ちを無視する癖に、人の気持ちを汲み取るのが上手いから。ただ、二人で屋上から夕陽を眺めていた。この時間は、壊したくないなと思う。俺のしたいこと、俺のされたいこと、半田のしたいこと、半田のされたいこと。他人だからそれは分からない。でも、それでも。瞬間は、永遠だとおもうんだ。網膜に焼き付けたような橙を見上げた。半田は屋上の手すりに背を向けて夜の方向を見ていた。生まれも育ちも何もかもが違う他人が分かり合うことなんて出来るのだろうか。半田に聞いたら出来ないだろうと言うんだろうな。でも、ただ、俺のエゴで半田に夜へ歩み出して欲しくなかったから、別の方向を見つめたまま手を繋いだ。なんとなく絡めただけの、よくある、当たり前の感情表現だ。半田も何も言わず、強く握り返してくれて、悲しくないのに、溢れる感情が、そこにはあった。この気持ちを素直に伝えられたら、いや止めよう。望んでいないことを強いるのは悪癖だ。それでも等身大の俺の気持ちであることに違いはなかった。永遠に壊れない強固なものが、あればいいのにと、その日初めて思ったのだ。



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    kadekaru_kaname

    DONE性癖のうちの一つです……、書くか迷っていると言ったら、書きなよ!と言ってもらえたので断片ですが……!半ロナです。
    貞盲ぷちん、ぷちん、と音もたたずに。ただ、微睡みの中でわずかな痛みが痴丘から取り除かれていく。脛とか、腕とか、たまに脇とか。そういうところから千切るように、陰茎を刺激しない程度にあまり自分で直視することのない白銀を抜く。ただ、別に悪いことをしてるつもりも、恥ずかしさもない。ぼんやりと眠気と、エッセンス程度のちくりとした感覚がなんだかほんわかと気持ちがいいのだ。誰にも言えねえよなあ、と今では思う。服を着てる方が珍しいと言われる退治人の仕事でも、流石に帰宅する前には局部程度は隠すので、まだ、きっと、おそらく、なんとなくだが、他人にはバレていないと思うのだ。朝になって、目が覚めて、覚醒した意識の後に待つ、生来の気質にうんざりするのは分かっているのだが、夢精をコントロール出来ないように、欠伸や鼾に原因があるように、俺にとっては不可逆の行為だった。陰毛抜毛症、それが多分一番俺の症状に近い名前なのだと思う。勝手に抜けるのではなく、何故か抜いてしまう。人によってはそれが頭皮であったり、それこそ指の毛とか腕の毛とかにもなるのだろう。ショットが聞いたら、何らかの冒涜だと嘆き悲しむだろう。人によってこの症状は様々だ。そこに毛があるのが気に入らないとか、落ち着かないから適当に抜いてしまうとか、人の数だけ抜毛症はある。俺の場合は、気持ちいいから以外の何物でもないのだが。何度もやめようと思って、それでも無自覚に繰り返すうちに、俺の痴丘は焼け野原のように疎らな銀しか残らなかった。だが問題ないと思っていたのだ、半田と付き合う前までは!
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