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    kadekaru_kaname

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    kadekaru_kaname

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    12/11の半ロナオンリーの個人誌サンプルとなります。よろしくお願いいたします。視点が変わる、ひとつの話をなぞる物語です。

    推論A/根拠Bもしかしたら半田には好きな奴が居るかもしれない。そんな推論を立てて、俺はロナ戦の新作を書く予定の真っ白な原稿ファイルを眺めていた。
    「……はぁ」
    「そんなため息を吐いても締め切りは変わらないよロナルド君」
    「締め切りに怯えてんじゃねえよ!」
    「フクマさんが来てからは怯えっぱなしじゃあないか」
    ドラルクが殊勝にも紅茶をパソコンの隣に置いてくれたので、特に温度も気にせず口に運ぶ。瞬間、熱よりも焼けるような感覚が口腔を襲い、声も無くはくはくと空気を吸い込んだ。妙な空気が擦れる音が響くと、ドラルクは呆れたように俺を見た。
    「完成したばかりの紅茶をそんな飲み方するから火傷をするのだよ、ほらジョンだって憐れんだような瞳で君を映している」
    「嘘だよな、ジョンは俺を馬鹿にしないよな?」
    「私も別に君を馬鹿にしているわけではない、心配しているんだ」
    珍しくも本気で此方を心配しているような声色にドラルクの方を見れば、脚を組んで諦観に近い表情で見つめられていた。
    「なんだよ、気持ち悪ィな」
    「最近の君が上の空過ぎるから、ちょっとどうにかしてあげないと本職も副業も弊害が出るんだろうと思っただけだよ」
    もし君に仕事がなくなったら私も生きるのが面倒だからね、吸血鬼だけれど。と言いつつもドラルクは首を振る。
    「てめーはすぐ死ぬだろうが」
    「死んでも生き返るから良いのだよ、折角楽しい暇つぶし……いや、共同生活をしているのだから相談の一つくらいしてくれたって良いんだよ」
    「相談つってもなぁ……」
    足元でジョンがズボンの裾を引っ張りながら「ヌー!」と声援を送ってくれる。こんなにも俺を思ってくれているのだと思うと、何故か知らないけれど涙が出そうになり「ジョン~ッ!」とその小さな体躯を抱きしめた。ドラルクは先ほど自分が言ったことを忘れているのか、スマートフォンで誰かとやり取りをしていて「特売日は明日までなのか、良い情報をありがとう!」と会話を終えていた。
    「おい、ドラ公。心配するならちゃんとしろや」
    「それは心配される側がいう事じゃないね、というか本当に締め切りに怯えていたわけじゃないのかい?」
    真っ白なディスプレイを見つめながら、俺は先ほど考えていた半田のことを渋々口に出した。
    「いやー、半田って好きなやつ居るのかなって思ってさ」
    「思春期の童貞みたいなことで悩むのはやめたまえよ」
    「違えーよ! ただ、その、同い年だし……あいつ黙ってればモテるし、俺が絡まないと仕事出来るし、そういう相手が居てもおかしくないよなって思うとなんか、上手く言えない気持ちになるんだよな」
    せめて何かその雪原のような原稿を文字で埋めようと思い、ゼンラニウムの特徴を延々と書いてみた。しかし書けば書くほど世間一般の理想である「ロナルド様」とかけ離れていくような気がしてこっそり涙を流すことしか出来ない。仕方がないから全裸であることを除き、ゼラニウムの特徴をウェブ百科事典からコピペしてみたがこれでは盗作だ。
    「どうすりゃいいんだよーッ!」
    「まずは落ち着いたらどうだね」
    「お前にだけは言われたくねえ!」
    「人間には類は友を呼ぶという言葉があるだろう、君も半田君も似た者同士なんだから別に困ることはないだろう。それより先に君が、結婚願望があるとかそういう話でもないんだろう?」
    まともな切り口の質問をよくよく考えてみたら何がどうしてため息に繋がるのか、自分でもうまく説明が付かなかった。どうしてだろうか、自分がモテないのに先を越されるのが悔しいから、とかそういう理由ではない気がするのだ。改めて、淹れてもらった紅茶を今度は慎重に口にすれば、幾分か落ち着いてきて、思考も緩やかに固まってきた。
    「別に妬みとかじゃないけど、疎外感っつーの? アイツは変な奴だけど、それでも友達だし。それに仕事だって真っ当だから、引く手数多なんだろうなーとか思うと、それに比べて俺って……とかなるじゃん」
    「同意を求められても頷けないが、確かに半田君のビジュアルはダンピール故の良さがあるし、仕事も君が絡まなければとても出来る男だ。しかしだね、それよりも前に大きなハードルがあるのだよ」
    言われた内容を咀嚼できずに首をひねれば「これだから若造は」と嘆かれ、一回殴って砂にした。その度にジョンが悲し気な声を上げるのは少し切なかったけれど、突発的な衝動に勝てる道理もない。
    「で、そのハードルってなんだよ」
    「人にものを頼む態度かね、それが!」
    「頼んでねえよ恐喝じゃ!」
    「うわーっ! 蛮族モードに入ってるよこの人面倒くさい!」
    大きな声でメンタルを殴りかかっていると、床からヒナイチが出てきて「もう夜だぞ」と言いながらキッチンで冷ましてあるドラルクのクッキーをタッパーに入れて持って帰って行ってしまった。こういう光景が当たり前になっているのがおかしいのだとは思うが、突っ込む気力もない。ドラルクは「まだ味見もしていないのに!」とまた大声を出していたので「うるせえ」と軽く殴ったらまた死んだ。
    「そんで、ハードルってなに」
    「一度ならず、二度までも……薄情な退治人だこと。ねえジョン?」
    ジョンは俺とドラルクの顔を交互に見ては顔を小さな手で覆い隠し逃げて行ってしまった。選べない、ということなのだろう。そのことが、若干俺の気持ちを大きくさせた。
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    kadekaru_kaname

    DONE性癖のうちの一つです……、書くか迷っていると言ったら、書きなよ!と言ってもらえたので断片ですが……!半ロナです。
    貞盲ぷちん、ぷちん、と音もたたずに。ただ、微睡みの中でわずかな痛みが痴丘から取り除かれていく。脛とか、腕とか、たまに脇とか。そういうところから千切るように、陰茎を刺激しない程度にあまり自分で直視することのない白銀を抜く。ただ、別に悪いことをしてるつもりも、恥ずかしさもない。ぼんやりと眠気と、エッセンス程度のちくりとした感覚がなんだかほんわかと気持ちがいいのだ。誰にも言えねえよなあ、と今では思う。服を着てる方が珍しいと言われる退治人の仕事でも、流石に帰宅する前には局部程度は隠すので、まだ、きっと、おそらく、なんとなくだが、他人にはバレていないと思うのだ。朝になって、目が覚めて、覚醒した意識の後に待つ、生来の気質にうんざりするのは分かっているのだが、夢精をコントロール出来ないように、欠伸や鼾に原因があるように、俺にとっては不可逆の行為だった。陰毛抜毛症、それが多分一番俺の症状に近い名前なのだと思う。勝手に抜けるのではなく、何故か抜いてしまう。人によってはそれが頭皮であったり、それこそ指の毛とか腕の毛とかにもなるのだろう。ショットが聞いたら、何らかの冒涜だと嘆き悲しむだろう。人によってこの症状は様々だ。そこに毛があるのが気に入らないとか、落ち着かないから適当に抜いてしまうとか、人の数だけ抜毛症はある。俺の場合は、気持ちいいから以外の何物でもないのだが。何度もやめようと思って、それでも無自覚に繰り返すうちに、俺の痴丘は焼け野原のように疎らな銀しか残らなかった。だが問題ないと思っていたのだ、半田と付き合う前までは!
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    INFO【アンソロ寄稿のお知らせ(サンプル付)】
    2022/12/11 半ロナオンリーにて半ロナ学生アンソロジー「放課後の運命論」に参加させていただきました!
    ◯は夏を担当させていただいております〜。高1の頃のまだ距離感が掴めきれてない半ロナだよ! 全年齢で初々しい感じの二人だよ!!
    よろしくお願いいたします〜
    おれたちの夏はこれからだ!!(冒頭サンプル)「お前らはもう高校生になったんだから分かってるだろうが、休み中は羽目を外しすぎるなよー。ああそれと、期末で補習になった奴は特別課題を出すから職員室に各自取りに行くように」
     今日はここまで、と担任が話を切り上げたのを合図に教室から一斉に同級生たちが引き上げていく。明日からの予定について騒ぎ立てる声は、一夏を謳歌する蝉時雨にどこか似ていた。
    (どいつもこいつも、何でこんなに夏が好きなんだ?)
     級友たちがはしゃぎ回るのを、半田は窓際の席に座ったまま他人事の様に眺めていた。
     昔から夏は得意になれない。体質のせいで日に焼けると肌が火傷したみたいに痛むし、夏場の剣道の稽古は道着のせいで軽い地獄だ。それに、夜が短くなるせいで母と過ごす時間が少なくなってしまう。嫌いとまでは言わないが、好きになれる要素が少ないからどうしても気が重たくなる季節だ。
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