無題細い肩が震え、身体の横で結ばれた拳にいっそう力が込められる。正面の男は大きな眼いっぱいに涙を湛え、今にもほろり。溢れさせてしまいそうだった。
「……ジャミルは、後悔してるのか?」
「そうは言ってないだろう」
声に出してから、言葉の選択を誤ったと気がついた。優秀さを自負する脳みそが、焦燥と不甲斐なさのあまり空回りしたのだ。この手に得た輝かしい宝物に後悔など欠片もあるはずがなく、むしろ際限なく欲しくなるから困っているというのに!
本音を正しく伝えられないもどかしさと緊張がため息に変わる。それがトリガーだったのだろう。
「言ってなくても、思ってるんだろ」
低く淡々とした声音は、涙を浮かべた男のものとは思えない。極限まで感情を削いだ響きが逆に悲痛なものに聞こえ、俺の口は否定の言葉はおろか呼吸まで止めてしまった。手を伸ばせば届く場所にいるのに、まったく動けそうにない。まるで避けるかのようにカリムが俯いたからだ。
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