Departure此の所、日課が増えた。薫の病室に足を運ぶことだ。望まれての行動では勿論ない。ほんの数秒でも毎日薫の顔を見たいという虎次郎の身勝手な動機での日課だ。病室に顔を出すと決まって薫には憎まれ口を叩かれるが、それすら愛おしく感じてしまうのは惚れた弱みだろう。
『桜屋敷薫』と書かれた病室の前を訪れる度に、薫は大怪我を負い入院している、という事実に直面させられる。
怪我をした薫の姿を見る度に、胸が引き裂かれそうになる。けれど、側に居たいと思ってしまうのだ。
虎次郎はふぅと小さく息を吸い込んだ。
「入るぞ〜」
「また来たのか。懲りない奴だな。」
「なんだよ。冷てえこと言うなよな」
開口早々、普段と変わらない調子の薫がいた。懲りないというのは、虎次郎がナースのナンパ目的で来てると思っているからだろう。こちとら100%全身全霊で薫目的で来てんだよ!と声を大にして叫びたい。
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