邂逅 ジージーと、蝉の泣く声が幾重にも重なって、まるで大きな滝の音のようだ。最近は温暖化だとか言われていて、やたら暑い日が多い。炭彦は、額から流れる汗を拭い、隣の桃寿郎に声をかけた。
「あっついねぇ、桃寿郎くん」
「そうだな!あと少しだぞ、炭彦」
大きなバッグを斜めがけにして、元気よく桃寿郎が返事をする。全然参ってなさそうだなぁ、と炭彦は一人微笑む。彼の明るい色の髪は、もしかしたら暑さを跳ね返してくれるのかもしれない。そう思ったが、首筋に汗が流れるのを見て、やはり彼も普通の人と同じように暑いのだと思い直した。
お盆は剣道部の練習も休みなので、桃寿郎は毎年祖父の家を訪ねる。最近では一人で行って泊まることも多くなったのだそうだ。いいなぁ広い日本家屋、僕も行ってみたい、そう炭彦が呟いたので、では一緒に行こう!と彼が言った。それで暑い中電車に揺られ、駅からの道のりを歩いている。
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