未完心地いい風が吹く秋の日だった。
居間で鏡を見るでもなくぼーっとしていた。ふと、「今日は静かだな」と気づく。部屋を見回すと、珍しく他の兄弟は皆出かけているようだ。母さんもさっき買い物に出かけたから、今家には誰もいないのだろう。
たまには1人で静かに過ごすのもいいかもしれない。静寂と孤独とオレ。ああ、今日もなんてクールなんだ。
天気がいいので縁側に座った。
心地いい風が頬を撫でる。薄い色の秋空を眺めて特に何をするでもない。なんとなく、こういう日もいいなぁと思っていると、がらりと玄関の戸が開く音がする。
誰か帰ってきたようだ。「ただいま」と小さく低い声が聞こえたので一松だろう。
一松。6つ子の片割れ。二つ下の弟。
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