(新刊サンプル)幼なじみのトッケン!?プロローグ 桜が舞い散る季節。あんずがこの夢ノ咲学院のプロデュース科に転校してきてから数週間が経過していた。
二年次からの新たな学生生活は波乱に満ちたもので、楽しいとか、充実しているとか、そうした青春じみたものを感じる前に、現実離れした環境に気持ちが浮ついて、地に足が着かないような心地だった。
そして今現在、実際に、あんずの二本の足は宙でぶらぶら揺れていた。地面に足が着いていないのである。
比喩で用いられる言葉を、目の前で起こっている様子を表すために使うのは適切ではないかもしれない。しかし、あんずの身体は事実、ひとりの男の手によって、軽々と持ち上げられていた。
遡ること数分前。
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