たきび「あ、山茶花だ」
「あ?」
簡単な任務帰り。補助監督の車を帰らせて歩く道すがら、傑が垣根に咲いた花に目をやる。濃いピンク色をしたその花は、流石の俺でも見覚えがあった。
「いや、それ椿だろ?」
「ううん、時期的に椿は早いし、それにほら、花びら」
傑が指す方向を見ると、俺たちの足元に綺麗な花びらがちらほら落ちていた。
「椿は花ごとぼとりと落ちるけど、山茶花は花びらが散るんだよ」
「ふーん」
花はすごく似てるけどね、と言いながらまた歩き出す。傑は何かとカッコつけだし、普段からこんなのは常識だーとか、こうするのが当たり前だーとか、色々と口煩く俺にモノを教えてくるけれど、今のはそーゆーのとは違う感じがした。
何というか、大事なものを、思い出した感じ。
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