平日痩身虚弱な吸血鬼が、独り寝の人間に身を寄せる季節がやってきた。
色めいたふうにも聞こえるが、実際は季節の変わり目暑さ寒さの微妙な頃合いに、暖を求める同胞が爆睡中の人間の横に寝転がり、小型電子機器での遊戯に耽るだけである。
豊かな体躯の人間は、同胞にとって暖房のごとき熱を発しているらしい。
吸血鬼退治人を生業とするこの家の主の人間は、酔狂にも高等吸血鬼を同居人とし、その手料理を食べ、その横で就寝する。
退治人として危機感がないのか、自信家であるのか、はたまた。
今日も「ゴリラの排熱利用〜」などと呟きながら同胞が黒衣のままゴロリと人間の横に寝転がった。
痩身の吸血鬼が横を陣取っても揺らがぬ体躯の人間の胸は、規則正しい呼吸で上下している。
1705