錆びついた夢急な息苦しさで、満月は目を開いた。
最初に見えたものは、ボロボロの街だった。よく見ようとしても周囲は砂埃が舞っていて、見えづらく、息もしづらい。魔力で身体を薄く覆って、即席のフィルターを作ってから、周囲を見回した。
本来、街に満ちているはずの人間の姿は見えない。気配も無い。無数の建物、無数の窓、錆の浮いた建物の欠片が、ただ風に撫でられてその身を削っていく。
そんな廃墟が立ち並ぶ大通りのアスファルトの上に、満月は立っていた。
(どうして私は此処にいるのだろう。)
まだ寝ぼけた頭で記憶を探る。
ストンと眠りに落ちる様に、不意に意識を失った自分。伸ばされた手。自分から自分の意識を引き剥がされる様な感覚。
心だけ、この世界に連れてこられた?
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