散兵様の心「クニクズシ?」
「ああ。稲妻の芝居に出てくる人物らしいぞ」
人差し指を立て得意げに語るパイモンに私はぼんやり相槌を打った。ふわふわと浮かぶ彼女の背後に稲妻城が小さく見える。
鶴観の霧を晴らし、久しぶりにここへ戻って来たのはリフレッシュ目的だ。
(色々とヘビーだったな……)
あの地で起きたことを知った日の夜は食事を摂らなかった。
解決には至ったのだが、いつものようにお腹いっぱい食べる気には到底なれなかった。パイモンも本調子でなく、結局静かに寄り添い合って眠りについた。
元々気分転換を兼ねての冒険だったが……最終的に少年を笑顔にしてあげられたことだけが救いか。
(そう、気分転換)
タルタリヤと話してからずっと塞ぎ込んでいたのだ。困った様子のパイモンに頭を撫でられた記憶が蘇る。
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