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    kamoijyun

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    kamoijyun

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    カツキャロ出会い小説です

    ##カツキャロ
    #ポップン
    popnPop
    #ポップンミュージック
    popnMusic

    Be nightaventure





    豪華客船クイーンポプザベス号

    世界各国を回る優雅な大型船で、

    中には都市が丸々一個入ったような空間が広がっている。

    高級店がずらりと並ぶ吹き抜けのショッピング街、

    デッキには大きなプール、

    そしてカジノ場が設置されていていた。

    そのカジノには若干20歳の凄腕ディーラーがいた。

    名前はキャロル もちろん女だ。

    金髪碧眼のアメリカ人で 

    登り始めた朝日の様にきらきらと輝くセミロングの髪をなびかせ、

    やわらかな碧い目が人々を魅了する。

    しかし、そんな美しい見た目と裏腹に彼女の腕前は

    カジノの本場であるラスベガスでも知らない人は居ないほどだった。

    彼女は一つの店に着かず各国を飛び回っている、

    『ディーラー・バニー』というコードネームのカジノ協会の秘密特殊エージェントである。

    そんな彼女はある任務を遂行するためにこの船に乗っていた。

    その任務とは、カジノ業界を震撼させている驚異の常勝客を倒す。と言うものであった。



    「こちらバニー、コードQはまだ現れません・・・どうぞ。」



    大金持ちばかりの娯楽場の中、本当にあの男は現れるのであろうか・・・キャロルは少し不安だった。

    寧ろ、現れて欲しくなかった と言った心境だった。

    勝負は時の運。厳しい修行を積んだキャロルであっても負けるときは負ける。

    いつも勝負は命がけである。

    「もうそろそろフランスに着くわね・・・。」

    キャロルは遠くの大きなガラスの向こうの煌めく対岸を見つめていた。





















    数時間後 キャロルは自室に帰り休憩していた。

    「フランス到着か・・・これで何カ国目だったかしら。」

    キャロルはベッドに座りぼーっとしていた。

    「このまま、コードQが現れなきゃ良いのに・・・。」

    そう呟くとベッドに倒れ、天井を仰いだ。

    「そろそろ、着替えて支度しなきゃ・・・。」







    キャロルはバニーガールの衣装に着替え、カジノへ向かい他のディーラーと交代した。

    「今日もコードQ来てないみたいね。」

    ほっとしたのもつかの間 向こうの方から手配書に書かれていた見覚えある顔が

    子分と思われる人間を2人つれてやってくる。

    「ま、まさか。」

    その男はキャロルの前に来ると、上から下へとじろじろとキャロルを見つめ、厭らしい笑みを浮かべると

    「あんたが噂の『ディーラー・バニー』か・・・噂通りのいい女じゃないか。」

    とキャロルだけに聞こえるよう小声で話しかけた。

    「・・・だったらどうするの?」

    キャロルは少し震えていた、しかし怯えていることを悟られてはならないと強気な態度で挑んだ。

    「ふ、お嬢ちゃん虚勢を張っても無駄だよ どれ 一つ勝負するか?」

    男は相変わらずキャロルをにやにやとした顔で見つめている。

    「望む所よ!」

    キャロルは小さく深呼吸して、キッと男をにらみカードを分け始めた。





    勝負は初め男の優勢であったが、後半キャロルが巻き返しついにキャロルが男を倒した。





    「どお?女だからって油断したでしょ?でも貴方も強かったわ。」

    キャロルは意気揚々と男に勝ちを宣言する。

    「・・・くそっこうなったら自棄だ!やっちまえ!」

    そう男が命令すると、子分2人は隠し持っていたナイフを取り出し、キャロルに襲いかかった。

    「きゃぁ!」

    「ふん、お前みたいなディーラーがいるとこっちも儲けられないのでね!消えてもらうよ!」



    なんとか攻撃を避けているが、1対2しかもこちらが女で向こうは凶器を持っている

    すこぶる分が悪い

    周りの大金持ち達はただただ怯えて逃げまどうだけだった。

    「ほら!死ぬなら痛くない方が良いだろ、逃げると痛みが増すだけだ!」

    壁に追いつめられキャロルは逃げ場を無くしそのままストンと床に座り込んだ



    死にたくない!



    子分が勢いをつけてナイフを振りかざした







    もう    だめ







    「ぐぁっ・・・なっ・・・なにを・・・っ」

    「レディーに刃物を突きつけるなんて、しかも男二人がかりで・・・スマートじゃないね。」



    最期を覚悟したキャロルは目をぎゅっと瞑っていたが、いつまで経っても意識が途切れず

    誰とも解らない第三者の声が聞こえゆっくりと目を開き、顔を上げた。

    そこには、子分の一人が誰かに腕を掴まれ自由を奪われている光景が有った。

    もう一人の子分も、突然現れた謎の人物に呆然としてしまっていたが、すぐその人物に襲いかかった。

    その人物は、掴んでいた子分の腕からナイフを取るとすぐに捨て、

    襲いかかってきた子分のみぞおちに蹴りを入れた。

    子分は勢いよく壁に当たりぐったりと倒れてしまった。

    「く、くそおぉ!」

    残った子分が暴れてその人物に蹴りを入れようとしたが逆に腕を捻られ大人しくなった。

    「ふん、この借りは必ず返す!覚えていろ、ディーラー・バニー!」

    分が悪くなったコードQが逃げようとした途端、警察官が駆けつけ取り押さえられた。

    そして、子分2人とともに現行犯逮捕され、警察に連行された。

    「お嬢さん、お怪我はありませんか?」

    キャロルははっと我に返り、その人物の顔をまじまじと見る。

    「・・・・・・・・・あ、ありがとうござい」

    「俺は当然のことをしたまでです。美しいレディーが危機に瀕している、男として助けるのが当然でしょう。」

    そういうとその人物はキャロルの前に立ち手をさしのべた。

    「さあ、どうぞ。」

    「す、すいません・・・・・・。」

    キャロルはまだ少し怯えていた。

    生命の危機から脱出できたものの、この仕事がいかに危険かを改めて感じたからだ

    「立てますか?」

    「ええ・・・。」

    キャロルが立ち上がると、周りから盛大な拍手がわき起こった。

    大半は助けた男への賞賛だが、キャロルの無事を祝う声も少なくなかった。

    「あの、本当にありがとうございました。お礼を・・・」

    キャロルがそう言いかけると、男は

    「礼ならもうもらいましたよ。貴方のその笑顔。」

    そういい残し足早に去っていってしまった。





















    「しばらく、休んでなさい。それに、君の任務はもう終わったんだ。」

    キャロルはその後自室に戻り事の顛末をボスに報告していた。

    「はい、そうします。」

    「しかし、その男 流石フランスって感じの男だね。」

    「ええ、でもなんだかフランス人って感じの顔じゃなかったような気がします。」

    「まあとにかく、無事で何より。怪我もないんだろ。」

    「はい。」

    「じゃあ、ゆっくりやすみなよ アメリカに着いたら本部に寄ってくれ。

     それまで、良い船旅を!」



    電話が切れ、キャロルは携帯を机に置き部屋を出た。

    どうしても、どうしてもさっきの男に礼がしたかった。

    キャロルの命の恩人である。

    しかし、あの男今まで見たことが無かった。

    あんな顔、1度見たら忘れることが出来ないと思うほどの顔だ。

    覚えがないと言うことはきっとフランスから乗ってきたのだろう。

    それに、旅行というような感じではなかった。もっと、ほかの理由が有りそうな。

    思考を巡らせていると、いつの間にか甲板に続くドアの前にいた。

    「少し、夜風にでも当たって落ち着こう。」

    キャロルはおもむろにドアを開けた。

    すると、甲板の一番向こう側に見覚えある人影が見えた。

    キャロルはまさかと思い、ゆっくりゆっくりその人影に近づきそして確信した。

    「あのーさっきの方ですよね?」

    おそるおそる後ろから声を掛ける、すると声の主はゆっくりと振り返り・・・

    「やっぱり こんなカナリアの様に美しい声は貴方でしたか。」

    と、相変わらずの調子で答えた。

    「あ、当たってた。こんな事言うのは貴方くらいですよ。」

    キャロルは男の隣に立ち、手すりに手を置いた。

    「そうですか?貴方みたいな人だったら口説かれ慣れていると思った。」

    男はキャロルを見上げてこう言った。男の方が幾分かキャロルより小さい。

    「さっきは・・・」

    そうキャロルが言いかけるとそれを制止するかのように男は言う

    「だから、男が女を守るのは当たり前で・・・・。」

    「かっこいいこと言うけど、命をかけて人を守るなんてそうそう出来ない事よ。貴方本当にすごいわ!」

    キャロルは男の目を見つめて言う、男は少し紅くなりすっと目線をそらすと前を見て

    「どんな理由でも、人を殺めてはいけないと思います。」

    と呟いた。

    「そうね、いけない事よね。」

    キャロルは手すりに腕を載せ、前屈みになって暗い夜の海を見つめていた。

    「そういえば、貴方お名前は?私はキャロル。」

    「別に名乗るほどのモノじゃないですよ。」

    「命の恩人の名前くらい聞かせてよ。」

    「仕方ないですね、俺の名前はMr.かつっ子ですよ。」

    それを聴いたキャロルは顔を上げ、かつの方を向き質問を投げかけた。

    「思った通り、貴方フランス人じゃないのね。なんでここに?」

    「修行に・・・料理修行のために来たんです。」

    何気なく始めた質問からの手探りの会話も、形になってきた。

    「どちらから?」

    「日本ですよ。」

    「まあ、一人で・・・大変ね。」

    「貴方はこの船の専属ディーラーなんですか?」

    「いいえ、派遣ディーラーって感じかな? 流しとも言う。」

    「流し・・・命を狙われるほどの実力なんですね。」

    「いいえー 私はた・・・   っくしゅん。」

    キャロルはずっとバニーの格好で甲板に出ていた。

    初めはずっと船内にいたので、寒いと感じることはなかったが予定外に外に出てしまい

    しかも長いこといたから、少し風邪を引いてしまったようだった。

    「あ、ごめんなさい 俺としたことが・・・はい俺のコートで良ければ。」

    そういうと、かつは自分の着ていたコートを脱ぎ彼女に渡した。

    「そ、そんな 貴方のコートでしょ?それに・・・私には小さいわ。」

    確かに、キャロルよりかつは背が低くかった。着たらきっとつんつるてんになってしまうだろう。

    「・・・・・・で、でも 貴方が風邪をこじらせるよりは。」

    「命を助けてもらって・・・私の方こそ何かお礼をしなきゃいけないのに。」

    「いいですよ、貴方が健康で幸せでいられることが俺へのお礼。」

    「もう・・・。」

    キャロルがコートを受け取り、着てみる が やはり小さかった。

    おまけに胸の部分が閉まらなかった。

    「やっぱり小さい・・・。」

    そういうとキャロルがくすくすと笑い始めた。

    それを見ていたかつも釣られて笑う。

    二人の笑い声が暗い空と海の混じる夜に溶けていった。



    出会いも突然で別れも突然だった。

    甲板から船内に戻るドアが突然力任せに開けられ、叫び声が聞こえた。

    「おい!お前休憩終わりだぞ、早く戻れ!」

    「あ」

    「え?」

    「すいません、俺行かなきゃ。」

    そう言い放つと大急ぎで呼びかけた男の方へ走っていくかつ

    「そ、ちょっとまって!コート!」

    キャロルはコートをさっと脱いで、差しだそうとしたがかつはもう遠くドアの方へ行ってしまっていた。

    「それ、あげますよ。小さいけど・・・俺と貴方が出会った記念に!」

    「ええ!?そ・・・そんな」

    キャロルは急いでかつの元へ駆け寄ろうとしたが時すでに遅し、

    彼は甲板のドアを開け、船内に戻っていってしまっていた。

    彼女の足じゃ、もう追いつけないと確信し、フランスに停泊している間に何とか渡せるだろうと考えた。



    次の日、キャロルは厨房に向かい もしものために昨日修行に来た青年の勤め先を聴きだした。

    その日の夜船内をいろいろ歩き回り探したが、青年を見つけることが出来なかった。

    その次の日の昼は、仕事で手が離せなかった。

    夜は自由だったので船内を探したがやはり見つけることは出来なかった。

    フランスは補給のための停泊であまり滞在期間が無く、もうその次の次の日には出発してしまった。

    「ああ、結局渡せなかった。」

    仕方がないと解っていたがやはり気になった。

    その後、船は着々と進んでいったが キャロルの心の隅にはずっとコートのことがあった。

    そして あっという間に最終地点のアメリカまでたどり着いた。

    キャロルはすぐに本部に向かい、ボスに報告をした。

    するとボスは、申し訳なさそうにキャロルにこういった。

    「任務完了後早速で悪いんだが、フランスに向かってくれないか?」

    それは思っても見ない絶好のチャンスだった。

    キャロルはコートを送ってしまおうかと考えていたが、フランスに行くならついでに渡してしまおう。と思った。

    「あ、はい 今すぐですね。大丈夫です。」

    「なんだか嬉しそうだな、そんなにフランスに行きたかったのかい?」

    「まあ・・・ちょっと。」

    そう言い残すとキャロルは足早に本部を去っていった。

    そして、すぐにフランスに向かった。













    「っと、ここかな?」

    キャロルはフランスに着き、早急に仕事を終えると あの彼が修行に来ているという料理屋に向かった。

    からん ころん

    おそるおそるドアを開けると入り口にいた店員が声をかけた。

    「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」

    「あ、えっと ここにMr.かつっ子って人が・・・」

    キャロルが店員に訪ねると、店員は困った顔をして

    「ああ、アイツか。アイツはちょっと前に日本に帰ったよ。」

    とばつが悪そうに言った。

    「・・・日本に?」

    「ああ、アイツに用でもあるんですか?」

    「ちょっと コート返そうかなって・・・。」

    「それならこっちでお預かりして向こうに送りますよ。」

    店員はキャロルの持っていたコートの入った紙袋を取ろうとした。

    しかし、キャロルはそれを拒んだ。

    一瞬 自分でもなぜ拒んでしまったか解らなかった。が すぐに解った。

    自分はコートを返しに来たんじゃない。会いたかったんだ。コートは口実なんだ と。

    自分で気づいて はっとした。 そして

    「あ あの 住所解りますか? どうしても自分で渡したくって。」

    小声で申し訳なさそうに店員に告げるキャロル。

    店員は驚いて目を見開いて しばらくキャロルを見つめた。その後

    「まあ、知らないことはないですけど・・・そこまでしなくても。」

    「お願いです!」

    キャロルもこれまで自分が必死になるとは思わなかった。

    会えなかったから、会えると思っていたからなのか。 

    しかし、これが確信出来るものではないと思っていた。

    ただ、ただ 会えると思っていたのに会えなかったから会いたくなっただけであって

    心の底から、相手を思って会いたいと思ったのだろうか それをキャロルはまだ解らなかった。

    しかし、実際会えば解ると思い 会わなければならないと思った。

    「・・・住所 調べてくる。待ってて。」

    「ありがとうございます!!」

    店員もキャロルの熱意を垣間見て渋々裏に回り住所を書いた紙を持ってきた。

    「すいません、お手数かけちゃって。」

    「いいですよ、しかし、なんであんな奴に。」

    「・・・何ででしょうね?私も解りません。」

    「・・・・・・・・・。」

    「それでは失礼しました。」

    キャロルはにこやかな笑顔を残しその場を去っていった。





    「もしもしボス?ちょっと本部に行くの遅くなる! ごめんなさい!」

    空港で電話をかけるキャロル 突然だったけどなんとか空席があった。

    準備なんてしていない。この身一つで十分。

    日本へ、日本まで確かめに。













    「・・・着いちゃった。」

    キャロルは地面に足をつけてやっと自分が日本に来たという実感を得た。

    空気もどことなく、違って思えた。

    着いてから一呼吸して、住所の書かれた紙を取り出しじっと見た。

    「どうやっていったら良いか…わかんない。」

    ゴールは解っているのにそこまでの道のりが解らない。

    人に聞いてみようかと思ったが、空港ではやはり人は忙しく動いていてなかなか聞けそうにもない。

    どうしたらいいのかと、おろおろとしているところに誰かが後ろから肩を叩いた。

    「Hi!どうしたの、迷子?」

    声のした方に振り返ってみると…

    「も、もしかして…ジュディさん!?」

    なんと、あの世界でも有名なジュディがいるではないか。キャロルは驚いて大声をあげてしまった。

    するとジュディはキャロルの口をふさぎ立てた人差し指を口に当て「静かに!」と諭した。

    キャロルは日本に着いたという興奮とジュディに会えた興奮ですっかりハイになっていた。

    しかし、ここで騒げばジュディに迷惑がかかると思い何とか落ち着こうと一呼吸置いてから

    「す、すいません でもなんで…。」

    とジュディに尋ねた。

    「あら、仕事よ。ショルキーと新曲の打ち合わせで…ねv」

    そういうとジュディは後ろの方にそっぽを向いて立っている人間に向かい呼びかけた。

    「……。」

    「しょ、ショルキーさんまで!!感激です!」

    キャロルは日本に来た理由を一瞬忘れてしまうほど嬉しかった。

    しかし、そこでキャロルの頭には一つの疑問が生まれてきた。

    「で、なんで私なんかに声を…。」

    「あ、貴方が迷子に見えたから…日本は初めて?」

    「はっはい!ちょっと会いたい人がいて…。」

    「ほほう…それ、もしかして彼氏!?」

    「ち、ちちち ちがいますよ!!」

    不意を突いたジュディの質問を受けた途端に頭の中に瞬時に彼の顔が浮かんできて紅くなってしまい、

    かなり不自然な否定の仕方をしてしまった。

    「図星ね!よっしいっちょ一肌脱いじゃうわ!」

    それを見たジュディは確信を得てお節介心に火がついた。こうなったジュディは誰もとめられない。

    「ショルキー!時間まだあるよね?」

    「……。」

    無言で時計を見つめるショルキー ジュディがこうなった以上、

    どうしたらいいかを一番よく知っているショルキーは時間があまり無いと解っていても

    「少しだけなら…。」

    としか言うしかなかった。

    「ok!じゃ、その人のいる場所教えて!連れて行ってあげる!ショルキーの車で。」

    「は!?」

    「え、だって 車の方が早いでしょ?ね、ショルキー。」

    「……わかったよ、ほら さっさと行くぞ。」

    「わぁい!ショルキー大好きv」

    そういうとジュディはショルキーに抱きついた。

    「ほ、本当に良いんでしょうか!?」

    キャロルはなんだかすごいことに巻き込まれたと実感ながら二人の後について行った。













    ショルキーのイメージとは少し違うような四輪駆動のごつい車に乗り込み

    カーナビに住所を入れて、ルートを算出し出発した。

    「ねえ、そういえば貴方の名前聴いてなかったわね。」

    助手席に座るジュディが後部座席に座るキャロルに話しかける。

    「えっと、キャロルって言います。」

    「そっか、キャロルちゃんか。その彼とはどうやってあったの?」

    「彼…というより私の命の恩人なんです。危ないところを助けてもらって。お礼がしたくって。」

    「そう、 それで一目惚れしちゃったのねv」

    「だ、だから…っ。」

    キャロルは否定しつつも嫌じゃないといった感じの答えになりつつあった。

    「話が盛り上がっている時に悪いが、ここで降りてもらう。」

    話が盛り上がっていて気づかなかったが、いつの間にか小さな町の駅前にたどり着いていた。

    「なんで!?ちゃんと案内してあげないと迷っちゃうよ!」

    お節介スイッチの入ったジュディは相手が目的を果たすまで見届けなければという使命があるのだ。

    「しょうがないだろ、時間もないし それにその住所はこの先の商店街の中にあって

    商店街は車両通行禁止なんだ!」

    ショルキーは子供をしかりつけるような厳しい口調でジュディに言う。

    「…そっか、ごめんねキャロルちゃん。ちゃんと会えるよう祈ってるわ!」

    「はい!ありがとうございます!本当に、このご恩は一生忘れません。」

    そういうとキャロルは勢いよく車を飛び出した。

    背中の方から車の発信音とクラクションが聞こえてきたがキャロルは振り返らなかった。













    勢いよく飛び出したのは良いが、いったいどっちに向かって良いかさっぱり解らなかった。

    商店街は活気があって、買い物にいそしむ主婦や、学校帰りの子供達が楽しげに下校する姿がなんだか自分の田舎を想像させた。

    「とにかく、誰かに聴いてみよう。」

    勢いに任せてここまできたんだ、意を決して道を行く女の人に尋ねてみた。

    「あ、あのーすいません。 ここに行くにはどうしたらいいでしょう?」

    おそるおそる話しかけて見ると、向こうの女の人も驚いたようで

    「どうしようライト君、私英語しゃべれないわ!!」

    と、一緒に歩いていた少年に必死に助けを求めていた。

    「ちょ、はなさん!!ぼくだって解りませんよ。」

    「授業で習ってるんでしょ?!」

    「な、習ってますけど…無理です!」

    女の人と少年は、外人に話しかけられたという事でてんやわんやになっていた。

    やっぱり駄目なのか…とキャロルがあきらめて他の人に聞こうとしたとき

    「ねえ、この住所ってさ 日の出食堂じゃない?」

    メモをちらっと見た少年が、どうやらそこの場所に心当たりがあるらしく、女の人にメモを見せていた。

    「あら、本当 これ日の出食堂の住所ね。なんでこの人ここに行きたいのかしら。」

    「きっと、取材か何かですよ!すごいことになったなぁ…。」

    「えと、一緒に来てください。リピートアフターミー?」

    「はなさん、ちがうよ!Follow meですよ。」

    「あ、そうそう。」

    どうやらこの人達について行けばいいということはキャロルにも解った。

    ぺこりと日本流のお礼をして、キャロルは女の人と男の子についていくことになった。













    「あ、太郎さんと中路さん!」

    店の前に男が二人立っていた。男の子はその二人を見つけると走り寄った。

    「よう ここにいれば来ると思って待ってたのさ。」

    「……後ろの金髪美女は誰だ。」

    学生服を着てマフラーで口元を隠している男は眼鏡を中指であげながらじっとキャロルを見つめた。

    「なんかね、ここに用があるみたいなの。道案内を頼まれちゃって。」

    女の人は口元を手に当てすこしはにかんだ。

    「きっと取材だよ!すごいね こんな外人さんが取材にくるなんて!!」

    少年は興奮気味に大きな身振り手振りで言う。

    「お、っていうと 常連のオレたちも取材受けちゃったりして!」

    ハーフパンツ、Tシャツ姿の男もわりかし乗り気らしい。

    「……ふん、オレはパスだ。」

    先ほどの学生服の男は嫌そうに帽子のつばを下げ、顔を隠した。

    「じゃ、早速行きますか!」

    女の人が勢いよくその店の扉を開ける。

    そして、キャロルはようやくこの店が自分の探していた人物のいる店だと解った。

    (あの人に会える。)













    「いらっしゃいませ~!」

    ドアを開けるとすぐ少女が声をかけてきた。

    その少女、なんだか髪の毛が笹の葉になっている。なにかのファッションだろうか…

    「あ、みなさん今日もおそろいで。」

    なんだか彼に似た少年も笑顔でこちらを向いている。

    「あれ?後ろの人誰?」

    少女がキャロルの存在に気づいて声を掛ける。

    「そうそう、この人ね 駅前で会ったんだけどここに来たいって。」

    女の人がキャロルを前に進め事情を代わりに説明する。

    キャロルは、珍しそうに店内をいろいろ見ていると

    「へえ、なんでこの店に。」

    少年は興味を示してキャロルに尋ねた。

    「それは…

    キャロルが言いかけた時、調理場の向こうから見覚えある影が近づいてきた。

    「やたら騒がしいけど なんか珍しいことでもあったんですか?」

    (聞き覚えある…この声は!)

    キャロルは声のした方にはっと目線を向けた。

    そしてそこには…





    「あ、あのときの…………・・・っ!」







    「会いたかった!!」



    「はあ?」



    キャロルは出会えた感動で、つい 抱きついてしまった。キャロル的には抱きつくなんて日常茶飯事で

    別にどうってことは無かったが… ここは日本。 周りは大わらわ。

    「ど、どど どういう事でしょう!!」

    「まさか、アイツの恋人とか。」

    「………許さん。」

    「中路さん、怖い。って気持ちもわかりますけど。」

    「兄さん何も言ってなかったよ。」

    「わわわわわ。」

    狭い店内大混乱。あれやこれやといらぬ憶測飛び交います。



    「な、なんで貴方がここに。」

    やっと解放されたかつはこの状況がまだ旨く飲み込めていないようだった。

    「だから、コートを返しに…それと どうしてもお礼がしたくって!」

    キャロルはばっとかつの手を取りぎゅっと握った。

    「だから…コートはあげるって  それにお礼はもう…・」

    突然のことでいつもの冷静さ…というよりキザっぽさが全く見られないかつ。

    「……それだけじゃないの。私、貴方に会って確かめたかったの。」

    キャロルは大きく息を吸ってぐっとかつを見つめると



    「貴方のことが、好き…になっちゃったみた…い。」



    長い、永い沈黙の時間。それはきっと外界からすれば一瞬だったんだろうけどこの日の出食堂の店内では永遠の様にものすごく永い時間に感じた。



    「え?」



    「ええ?」



    「ええええええええぇ!?」



    その場にいたキャロル以外の人間が悲鳴ともとれるくらいのすごい勢いで叫んだ。



    「なな、な 」



    周りの人間はもはや声すら出ない状態で、唯一かつだけが彼女に対して今大多数が思っているだろう質問を投げかけることができた。



    「な、なんでそんな急に!! ってか 何かの間違えじゃ!!」

    しどろもどろながら必死に訴えるかつ、しかし彼女はただにっこりほほえんで

    「貴方に会って解ったの、やっぱりこの気持ちは恋なんだって。」

    と答えるだけだった。



    「…そ、そんな だって 俺たち数回しか会って無いじゃないですか…。」

    「恋に回数なんて関係ないわよ。そうでしょ?」

    「…………。」



    「……そ、そんな事があって良いのだろうか。」

    Tシャツの男が唖然として言う。

    「何かの、何かの間違えだ。」

    学生服の男は何度も何度も眼鏡を直す。

    「何があったか知らないけど、あの人がそういうなら良いんじゃないでしょうか?」

    ゴーグルをつけた少年は肯定的な意見を述べる。

    「恋に、恋に恋い焦がれているんじゃないの?そうよ、きっとそうよ。

     落ち着けばきっと、彼女も思い直してくれるわ!」

    なぜか女の人は全否定する。

    「わ、わわわ。」

    少女と少年はわたわたするだけで精一杯。



    「今すぐ返事が欲しいって訳じゃないの。私ゆっくり待つわ。」

    そういうと今まで握っていた手をほどいてくるっと向きを変え、ドアに向かっていった。



    「私、もう帰らなきゃ 今日中にアメリカに行かなきゃいけないの。 本当はもっとずっと一緒にいたかった。」

    そういうとまたこちら側に向きを変え

    「じゃあね また会いに来るからv」

    といって投げキッスをして軽やかに去っていった。



    「あ、あははは はは 俺も罪な男だよなぁ…。」



    キャロルの後ろ姿を見てかつは震えた声でこう呟いた。







    キャロルが帰った後の日の出食堂はまるでスキャンダルを起こした芸能人の記者会見のような

    約一名への激しい質問責め会場になっていた。



    「お前いったいどんな魔術を使ったんだ!俺に教えろ!!」

    「な、中路さん魔術なんて使ってませんよ!」

    「彼女になにをしたの!?」

    「だから、命を助けてあげたって…はなさん何度も聞かないでくださいよ。」

    「で、彼女とはどこまでいったの?」

    「あーもう、だからちょっと話をしてコート貸してあげただけですってば!

    変な想像しないでくださいよ太郎さん。」



    「で、兄さんはあの人のことどう思ってるの?」



    「……………。」



    「答え出さないと、かわいそうよ。」



    「そうですね。」



    「……しばらく 一人で考えさせてくれ。」



    そういってかつは部屋に籠もってしまった。













    「アイツさぁ、普段女にキザな台詞吐いてる割には結構テンパってたよな。今日。」

    かつが引きこもってしまってからも、食堂内で会議が行われていた。

    「兄さんは、自分から女の人に優しくするのは得意だけど、優しくされるのは苦手なんです。

     恥ずかしいみたいで。 だから自分から積極的に優しくして、自分のペースにするとか。」

    「は~ん なるほど。」

    「あら、もうこんな時間。もう帰らなきゃ…。」

    はなは時計を見て驚いてすぐ立ち上がりライトの腕を掴み立たせた。

    「わわ、はなさん 自分で立てるよ。」

    「太郎君も、中路君も帰りましょ!ほら。」

    「はなさん?」

    「……帰るか。今日は大量にHPを消費した。」

    「そうだな、中路良いこと言った!」

    「じゃあ、お邪魔しました。」

    そういうとはなはみんなを連れて帰ってしまった。

    「あ、じゃあ私も帰んなきゃ。ばいばいそば君。」

    続いてさらさも帰った。

    「……・。」







    花屋組の帰り道、ライトがはなに質問を投げかける。

    「はなさん何で急に帰るなんて…。」

    「もう暗いでしょ?それにあんまり騒いだら悩んでるあの人に迷惑かかるじゃない。」

    「…はなさん、やさしいね。」

    「……真剣に考えて欲しいの。恋って、楽しいだけじゃなく苦しいって事。」

    「…………・。」



    星がきれいに煌めく夜空に、どんよりとした厚い雲が掛かり、暗闇を作り出している夜道だった。

















    数週間後 日の出食堂





    「兄さん!キャロルさんから荷物届いてるよ!!」



    「はぁ!?中身はなんて書いてある!?」



    「ん~ こわれもの・精密機械だって!」



    「…・?」



    早速兄弟でその段ボールをあけてみる。

    中身は・・・・



    「パソコン?」



    「なんか防犯カメラみたいな物も入ってるよ。」



    「ほほう、それwebカメラだな。」



    「わ、中路さんなんですか 急に。」



    後ろの方から中路が眼鏡のつるをもって段ボールの中身を見ていた。



    「ってことは、フェイスチャットでお互いの顔を見つつはなせるって事ですね。」



    そのまた後ろからライトも箱の中身を気にしている。



    「は?な、なんだそれ。」



    「だから、要するにテレビ電話みたいなもんだよ。パソコンを使った。」



    椅子に座っていた太郎がかつに説明する。



    「と、言うことはインターネットにつなげなきゃ駄目ね。」



    向かいに座っているはなも会話に参加する。



    「あ、手紙入ってるよ。」



    段ボールの中身を漁っていたさらさが一通の手紙を発見した。



    「キャロルさんから…・って当たり前か。」



    かつは手紙を開けて読み出した。



    『かつへ

     貴方は前、「お礼は貴方が健康で幸せでいられること」って言いましたよね。

     私は貴方の顔を毎日見ることで幸せにになれます。

     と、言うわけで 私に毎日顔を見せてください。私も貴方に毎日幸せな顔を見せます

     これが私からのお礼ですv



      大好…・・





    「というわけだ!!」



    「おい、お前最後まで読めよ!」



    かつは途中で顔を真っ赤にして読むのをやめてしまった。

    それを見た太郎は笑いながらヤジを入れた。



    「えーじゃあ代わりに私が読みまーす!」



    さらさはかつから手紙を取り上げ大声で続きを読んだ。



    「大好き!ばつばつばつ? キャロル。」



    「ばつばつばつ?ってなに?」



    そばとさらさとライトが一斉に質問した。



    「うーん子供は知らなくてよし!」



    太郎はにやにやしながら答えた。



    「え?」



    どうやらはなさんも解らないようだ。



    「ま、そういう意味だ!な、中路!」



    そういうと太郎はぽんぽん と中路の肩を叩いた。



    「…………ネットつなげるか。」



    中路は少しむっとしてから早速作業に取りかかった。

    こうして、日の出食堂がグローバリゼーションなIT革命の波に乗ることになった。
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