夜中と呼ぶべきか、早朝と呼ぶべきか、迷うような時間帯だった。作業を終えてリビングに出ると、暗闇の中に大きなまるい固まりが見えた。
夕飯を終えて部屋に戻った時にはなかったそれを不思議に思い、近づいてみる。
「…あ」
ルカだった。
まるいのはコートで、ルカはそれに埋もれて、ふー、ふー、と息をしていた。表情は伺えない。けれど、真っ白だったコートが黒く汚れていて、ああ、何かあったんだなということだけ察せられた。
ソファに腰を下ろして、ルカを眺めた。ふー、ふー、という息遣いは変わらないまま、それでも僕を意識して、わずかな緊張感が彼を包んだように見えた。
「おかえり、ルカ。遅かったね」
「………」
返事はない。まあ、それくらい別に気にしない。返事をすることすら面倒なときもあるだろう。特にルカは、僕みたいに一人で完結できる仕事でもないし、ほら、人間関係とか、いろいろ。
1913