恋のスパイス【成唯】 土曜日の練習場所の確保は、なかなか大変だ。星奏学院内の練習室は、休日であっても土曜日だけは生徒向けに開放してくれている。でも、ただでさえ混み合う上に音楽科の生徒たちに枠はすぐに押さえられてしまうから普通科の私にはとてつもなく不利だ。菩提樹寮の最上階の塔も防音の練習室にはなっているけれど、寮生にも使いたい人がたくさんいるからそこもなかなかの激戦区なのだ。
だから、そんな土曜日に学院の練習室を奇跡的に確保できた時、私は大きくガッツポーズをしてしまった。土曜日にわざわざ学院まで行かなくちゃならないけれど、せっかくの機会なのだから贅沢を言っていられない。
練習室の予約時刻は午後2時からなので、昼食を食べてから向かおうと私は決めた。購買や学食のない休日の寮生の昼食は、人それぞれだ。共同のキッチンを借りて自炊して作ったり、コンビニや近くのお店のテイクアウトで買ってきたりする人が多い。私は、今日は外でランチをすることにした。もちろん行き先は、私の彼氏の成宮くんがバイトをしているカフェ。お茶をしに行ったときに食べたスイーツが絶品で、それをきっかけに、私はそこがとてもお気に入りのお店になってしまった。成宮くんが、スイーツだけじゃなくてランチメニューのパスタやピザもおいしいと教えてくれたから、いつかぜひ食べてみたいとずっとチャンスを狙っていた。
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