好きだと言いたい 世の人は、時に、俺を籠の鳥だと言う。
生家の生業──常ならぬ髪や瞳の色は、炎柱を目指す人生以外、選択の余地がないと映るらしい。この境遇を羨望されることも無きにしもないが、大半が向けてくる憐憫の眼差しには、正直なところ飽き飽きしていた。
早く柱になれと俺に発破をかけた男は、単に戦力を強化したかっただけかもしれない。それでも、背筋に震えがくるほど嬉しかった。血筋や輩行の縛りで否応なくではない。俺は俺の意志で柱に上り詰めるのだと、思いを深くした。
並行して、その男──不死川への想いも。
根が常識人の彼は、やがて妻を娶り子を成し、穏やかで温かい家庭を築くだろう。当然、最優先すべきは鬼殺の勤めではあるのだけれど、人並みの幸福を得ても誰に後ろ指さされるものではない。それを、俺が邪魔する訳にはいかなかった。真に彼を愛するのであれば、なおさら。
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