『たいもひとりはうまからず』「……どーっすかな今日」





制限時間いっぱいまでベースを弾き、借りていたスタジオをでると日はすっかり高くなっていた。

ちょうど時刻は昼時……が、如何せん腹が減らない。いや、本当は減っているのかもしれないが自ら食事をとろうと思うほどの欲が湧かないのだ。疲労は感じるからそれなりに動いているには違いないし、消費したエネルギーの分だけ空腹を覚えていても不思議はないのだが……結局今日も"ひとりでメシを食うのだ"と思うと、微々たる食欲よりも、それを満たすためにあれこれ悩むのは面倒だという気持ちの方が勝った。



大抵のことは適当に済ませられると思っていたが、俺って案外繊細なのかもしれない。以前は……ひとりでいることが当たり前だった頃は、むしろ他人と時間を共有するなど鬱陶しいことこの上ないと思っていたのに。

【弔桐】ワルツ香港に新しく来たイギリスの裕福な商人は最近舞踏会を開きますが、これは裕福な商人のために何か爵位があると言われています。
香港の有名な双龍兄弟も当然招待された。
「舞会ですよ、兄さん。この新しく来た肥えた羊はとても大きいですよ。」
「のんだ」
「でも兄さん、ダンスできるんですか」
「……」

「兄さん、ちょっとリラックスしてください。私を踏んでもかまいません」
「うるさいですね」
弔兵衛と違って，桐馬はそういうものを覚えるのが早いんです。特にそういう坊っちゃんやお嬢さんが興味を持ってくれることのほうが早いんです。桐馬はすぐに男歩を覚え、兄に教えるために女歩もすぐに覚えました。
弔兵衛は桐馬を見て、子供の頃から何も変わっているような、何も変わっていないような、そんな様子でした。こうして二人でわいわい言い合いをしていると、思い出の不破家の庭に戻ってきたような気がします。ただ、今のホールは洋風で、昔に戻っていないのかもしれません。